さて、新しいSLCに用いられる1.6リッターターボは、最新の直噴エンジン。156馬力の最高出力と、25.5kg-mの最大トルクを発生します。2リッターモデル(184馬力/30.6kg-m)と比較すると、JC08モードでの燃費は、1.6リッターが14.9k/L、2リッターが14.2km/L…。アレ!? あんまり変わらない? でもまあ、今のご時世、少しでも小さいエンジンを積んでいた方が、むしろカッコいいかもしれません…。
SLC180スポーツの車重は、200スポーツより20kg軽い1520kg。相対的な動力性能では2リッターのそれに及びませんが、絶対的には、1.6リッターターボで不足はありません。ルーフの開閉にかかわらず、ボディの剛性感は高く、薄いタイヤ(前40扁平/後35扁平)を巻く18インチの足まわりにも関わらず、穏やかな乗り心地です。冒頭にも書きましたが、走り出しの“ちょっと腰が重い感じ”が、少し前のメルセデスらしくて、個人的にはうれしく思いました。
ことあるごとに“アジリティ(機敏さ)”を強調する最近のメルセデス車に、少しばかりせわしなさを感じている方は、SLCを試してみてはいかがでしょう? 良くも悪くもモデルライフが長くなるオープン2シーターならではの利点を享受できるかもしれません。
全体に大人っぽいドライブフィールのSLCですが、走行モードを変える“ダイナミックセレクト”を備えます。通常の「コンフォート」から、「スポーツ」に変更すると、エンジン、トランスミッション、足まわり、そしてステアリングフィールが、グッとアグレッシブに!
1.6リッターモデルには、モードによって排気音を変える“スポーツエグゾーストシステム”は備わりませんが、9速という多段ATがすかさずギヤを落とすので、結果的にエグゾーストノートが高まって、スポーティに演出してくれます。
余談ですが、SLCのカタログにあるスポーツエグゾーストシステムの説明には「スポーツカーを彷彿とさせるようなサウンドを奏でます」とあります。ん? SLCはスポーツカーではないんかい!?
SLCのオリジン、1996年に登場したSLKは、何はともあれ、折り畳み式の電動ハードトップを現代に甦らせたモデルとして、特記されることでしょう。その後、猫も杓子も(!?)同様のルーフシステムを採用したことを鑑みると、希代のトレンドセッターだったんですね。
SLKは、大きく見ればユーノス「ロードスター」フォロワーの1台ですが、後に、NC型こと3世代目ロードスターがリトラクタブルハードトップを採用しています。狙っている顧客層がまるで違うオープンモデルの2車ですが、いい意味で影響し合っている印象があって、クルマ好きとしてはうれしい限り。
細かいハナシになりますが、SLCではオープン時の室内への風の巻き込みを低減させるため、とある工夫をしています。ヘッドレスト後ろのロールバーに透明なアクリル板を取り付け、風を遮っているのです。不要な時には半回転させ、ロールバー背面に収納する仕組み。こうしたドラフトストップの装備も、マツダが先鞭を付けた記憶があります。
マツダのロードスターが美麗なND型になり、一方、SLKは新しい顔とエンジンを得て、SLCとなりました。実用性から一歩離れた2座オープンは、いわば自動車業界の“華”。ですから、ブランド、価格帯を問わず、ニューモデルの登場はめでたい! メルセデス・ベンツSLCに、幸アレと願うのです。
<SPECIFICATIONS>
☆180スポーツ
ボディサイズ:L4145×W1850×H1295mm
車重:1520kg
駆動方式:FR
エンジン:1595cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:9AT
最高出力:156馬力/5300回転
最大トルク:25.5kg-m/1250〜4000回転
価格:590万円
(文&写真/ダン・アオキ)
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