ただ、実際に乗ってみると拍子抜けするほどの扱いやすいマシンでした。スリムなエンジンとフレームのおかげで、排気量が1300ccオーバーとは思えないほど車体はコンパクト。シート高は834mmありますが、車体が軽量な上に細身なので足付き性も悪くなく、片足でマシンを支えるのに緊張感もありません。
ライドモードは最大5種類から選択でき、最も穏やかなRAINモードで走り出すと、最高出力が130PSに制限されることもあって街中や渋滞の中でもびっくりするほど乗りやすい。STREETモードに入れると、フルパワーとなりますがトラクションコントロールやウイリーコントロールが効くこともあり、扱いやすい印象は変わりません。SPORTモードはスロットルレスポンスが鋭くなり、従来の過激な特性が顔を覗かせます。その上のPERFORMANCEとTRACKのモードはオプション設定です。
サスペンションが、自動プリロード調整を備えたWP製の第3世代セミアクティブサスとなったことも乗りやすさに大きく貢献している様子。可変ダンピング機構も備えているので、走行中にストロークセンサーやIMUの情報に基づいてダンピングを最適化してくれます。そのため、荒れた路面でも接地感が掴みやすく、ハードなサスにありがちな路面からの突き上げを感じることもありませんでした。
コーナリング中も荷重や姿勢に合わせて前後サスがダンピングを最適化してくれるので安定感は抜群。アクセルを開けていくとリアがしっかり踏ん張り、タイヤのトラクションがリアルに伝わってきます。シートにもコシがあり、表面のグリップがいいのでタイヤのグリップが感じやすい。滑りにくい表皮の割に、お尻を左右にズラす動きはしやすい絶妙のシートです。
前後ともブレンボのブレーキシステムは、制動力はもちろんコントロールもしやすい。以前のモデルはしっかり奥まで突っ込んで握り込むような特性でしたが、現行モデルでは低速域でのコントロール性も向上しているので、街乗りやツーリングでも扱いやすいフィーリングになっていました。
以前のような過激な特性とは異なるキャラクターになっていますが、エンジンパワーはもちろん、足回りの性能も向上しているのでサーキットを走ってタイムを測れば間違いなく新型の方が速いでしょう。
それでいて、乗りやすさも向上していてタンクの容量も1.5L増えているので航続距離もアップ。ツーリングでも使いやすいモデルに仕上がっています。
価格は283万4000円と高価ではありますが、個性的な外観も含めて、人とは違うネイキッドマシンに乗りたいライダーには気になるモデルとなるでしょう。
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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