前後ホイールは27.5インチと、e-MTBの中ではやや小さめのサイズ。スピードを出して楽しむには大径の29インチの方が有利ですが、コンパクトで取り回しがしやすいため日本の里山を走るには向いているホイール径といえます。ブレーキは前後とも油圧のディスクブレーキを採用し、山道を駆け下っても不安のない制動力を確保しています。
実際に山道を走ってみましたが、太めの2.4インチ幅のタイヤと、MTBらしいフレーム設計のおかげで荒れた道でも十分に楽しむことができました。見た目だけMTBっぽくしたルック車ではなく、きちんと作り込まれたe-MTBであることが伝わってきます。アシストがあるので登りも楽にこなせて、体力に自信のない人でも山の中を走り回ることができるでしょう。
■街乗りやツーリングにも使える懐の深い設計
e-MTBではありますが、オフロード性能だけにフォーカスしているわけではありません。ハンドルは高さを設けたアップライトなもので、上体が起きた楽な乗車姿勢を実現。幅は広いので荒れた道でも押さえが効きますが、街中をのんびり走っても気持ちいいライディングポジションです。
BMXを思わせるハンドル形状ですが、補強バーの部分もハンドルと同じ22.2mmとされていて、ライトやスマホホルダーなどのアクセサリーが装着しやすくなっています。このハンドルもオリジナルで作ったものとのことで、手を掛けて作られたe-Bikeであることが感じられます。
変速ギアはリアのみの8段。変速段数としては少なめですが、ギア比はワイドなので登坂ではしっかりと軽いギアを選ぶことができます。アシストがあるため、ギアの段数は多い必要はなく、その分太くて耐久性のあるチェーンを使おうという意図があるようです。
バッテリーから給電されるタイプのライトも標準装備。ツーリングで帰り道が暗くなってしまった際に役立つだけでなく、通勤などでも役立つ装備です。サイドスタンドも、オリジナルで剛性が高いアルミ製のものを作っているので、街乗りでの使いやすさも配慮されていることが感じられます。
フレームやフォークには、随所にキャリアやボトルケージを装着するためのダボが設けられています。近年は、自転車にキャンプ道具などを積み込んで出掛ける“バイクパッキング”というスタイルが世界的に流行していますが、そういう使い方も視野に入れた構造。「セロー」もツーリングライダーに大きな支持を得ていましたが、そのことを思い起こさせる作りです。
カスタムの余地がしっかり設けられているのも「eEDIT 275」の特徴。より太いタイヤを履いたり、大きいサイズのホイールに入れ替えたりすることも可能なクリアランスが確保されています。フロントにはサスペンションフォークを装着することも前提に設計されているので、好みのサスペンションを入れてオフロード性能を高めることも可能。実際にサスペンションフォークを付けた車体にも乗ってみましたが、荒れた路面の下り坂などで走破性が圧倒的に高くなっていました。
かつてオフロード走行を楽しんでいたライダーであれば、オフロードバイクや走れる場所の激減を残念に思っているかもしれません。そんなライダーには、e-MTBを体験してもらいたいと思っています。荒れた路面や凹凸に対応するオフロード走行の楽しさは同じですし、e-MTBであれば走れるコースも増えています。バイクパッキングでキャンプツーリングのような楽しみ方も広がっていますので、ライディングの幅が広がるかもしれません。シンプルな作りながら、オフロードから街乗りまでマルチに使えて、カスタムする楽しみも味わえる「eEDIT 275」は、これからe-MTBデビューするなら注目の1台です。
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
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