ミニの新型車「エースマン」が、2024年6月に発売され、10月にコペンハーゲンでメディアむけ試乗会が開催されました。オリジナル・ミニの設計者が、もしいま生きていて、新たにミニを作るとしたら、という仮定で開発されたモデルといいます。
■エースマンはスポーティな印象のクロスオーバー型
ミニ・エースマンは、全長4080mmとコンパクトな車体が特徴。それが、オリジナル・ミニとの共通点といえます。もうひとつの共通点があるとしたら、きびきびと動く操縦感覚。エースマンはピュアEVなので、アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで、すかさず加速。それが俊敏さを感じさせます。
オリジナル・ミニについて少し触れると、全長3mそこそこの4人乗り。エンジン横置き、変速機はその下に。いわゆる2階建ての画期的設計で、室内空間を出来るだけ広くとった設計が特徴的。いっぽう運動性能が高く、ラリー選手権などモータースポーツでも大活躍しました。
エースマンは、アイコン的なオリジナル・ミニとはだいぶ違います。なによりデザイン。オリジナル・ミニはロードクリアランスがとても小さく、路面に吸い付いたような姿勢で走りました。それに対してエースマンはクロスオーバー型。
ミニ・エースマンの外観には、さまざまな特徴があります。新しい五角形を強調した変形ヘッドランプ、オリジナル・ミニとの共通点を意識させる輪郭だけのグリル、前後タイヤハウス回りの黒い合成樹脂製のクラディング、張り出し感が強調されたフェンダー、スポーティな印象を醸し出すリアコンビネーションランプ、とたくさん挙げられます。
それでいて、ボディ面はなめらかで、アグレッシブな印象よりも、ちょっとキュートなトイ感覚。こんなところも、オリジナル・ミニの設計者が“いま”ミニをつくったら、という仮定への答えなのかもしれません。
■走りの印象は「大人っぽい感覚」
走りの印象は、どちらかというと、大人っぽい感覚。スポーティなハンドリングが前面に押し出されているのでなく、快適性が追求されていると感じられます。足回りはよく動いて、乗車姿勢はフラットで、路面からの突き上げもなく乗り心地は快適。
ハンドルを操作したときの車体の動きも、すこし前の世代のミニがうたっていた「ゴーカートフィーリング」より、もうすこしおだやかで、高速でもリラックスして走っていられます。
日本でのラインナップは2本立て。パワーのある「エースマンSE」(最高出力160kW、最大トルク330Nm)と、「エースマンE」(135kW、290Nm)。「S」は54.2kWhの容量を持つバッテリーを搭載し、一充電走行距離は414km(WLTC)。スタンダードモデルは42.5kWhのバッテリーで、327km走るといいます。
私がコペンハーゲンの市街地と郊外でドライブしたのは「S」。スムーズな加速感がじつに快適です。ミニのねらいどおり、市街地の駐車など取り回し性がよく、「東京など大都市で使うのもいいでしょう?」という開発スタッフの言葉に納得でした。
■室内は空間的な余裕があって機能的
インテリアも、エースマンの大きな魅力です。ひとつは空間的余裕があること。リアシートのスペースも広くて、175cm超える大人が4人乗っていられます。荷室容量は300リッターあるので、全長4mのクルマとしては、かなり機能的だと思いました。
もうひとつ、インテリアのデザインも、エースマンの特長です。デザインが上手だし、素材使いに優れています。ブルーを基調に、バーミリオンを挿し色にした色づかいが雰囲気です。
とりわけ、ダッシュボードです。再生素材をニットのように使っています。編み物のように2色づかいにしているデザインが斬新。エースマン(と、先に登場したミニ・カントリーマンとミニ・クーパー)ならではの個性で、実に居心地がいいのです。
多方面にわたる性能ぶりゆえ“小さな巨人”などと呼ばれたオリジナル・ミニ。その衣鉢をどれだけ継いでくれているのか。実際に日常のパートナーとして使って、実体験してみたいものです。
【Specifications】
Mini Aceman SE
全長×全幅×全高:4080×1755×1515mm
ホイールベース:2605mm
動力:電気モーター
駆動方式:前輪駆動
最高出力:160kW
最大トルク:330Nm
駆動用バッテリー容量:54.2kWh
一充電走行距離:414km(WLTC)
価格:556万円
>> ミニ エースマン
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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