さて、e-POWER搭載モデルが、新たにノートのラインナップに加わることで、同モデルは「e-POWER」と「“ピュア”ガソリン車」とに大別されるようになりました。
両車の差異化のため、e-POWERバージョンには、専用のボディカラーとして“プレミアムコロナオレンジ”が用意されます。そのほか、グリルにはブルーの縁取りがされ、e-POWERエンブレムが、左右フロントドアと、バッチゲートに付きます。
内装では、シフターがリーフ同様の丸い“電制シフト”になり、専用メーターには、速度計の脇に“エンジン←→バッテリー←→タイヤ”間のエネルギーの流れを示すインジケーターが付きます。いずれも新しい機能に沿った変更ですね。
ノート e-POWERのグレード構成は、本革巻きステアリングホイール、合皮のシートなどをおごった豪華版「メダリスト」(224万4240円)、ベーシックな「X」(195万9120円)、装備を簡素化してさらなる燃費向上を図った「S」(177万2280円)の3種類です。
駆動方式はすべてFF(前輪駆動)で、4WDはラインナップされません。ちなみに、事実上のライバルに当たるトヨタ「アクア」は、176万1382円〜210万0109円ですから、価格面ではなかなかいい勝負です。
今回の試乗車は「X」。ウレタン製のステアリングホイールを握って走り始めると、日産のエンジニアの方々には申し訳ないのですが、あたかもハイブリッドカーの「EVモード」でドライブしているかのよう。いや、ハイブリッドカーのEVモードを常態化したのが、ノート e-POWERの走り、ともいえますが…。
“電動ノート”に搭載されるモーターは、回り始めから、いきなり最大トルクの25.9kg-mを発生します。出足の良さは2リッターターボを上回り、走行中の加速の鋭さも印象的。ただ、全体に“ピュア”EVを運転する時の「特別な感じ」は薄い。
その原因は「車重にある」と思います。ノートe-POWERは、当初の思惑どおり、普通のEVよりずっと軽いのです。例えば、リーフ(30kWh)は車重1450〜1480kg。ノート e-POWERの車重は1170〜1220kgです。
リーフの場合、バッテリーという重量物を床下に敷き詰めた1.5トン弱の物体を、強力なトルクを発生するモーターで動かすのです。スムーズで俊敏だけど、どこか重厚。そこに、良くも悪くも「スペシャルな感じ」が生じるわけです。
一方、はるかに小さなバッテリーしか積まないノート e-POWERは、同車のガソリンモデルと比較しても、体格のいい大人2名を余分に載せた程度の重量増(140〜180kg)に収まっています。そのためドライブフィールは、(その出生の過程はともかく)ハイブリッドカーのEVモードに類似したものになります。
もっとも、ノート e-POWERの場合、運転感覚にスペシャル感がないのは「ガソリン車から乗り換えても違和感がない」として、むしろ歓迎されるべきことです。何しろ“マイ・ファースト・EV”として、これまでEVと縁がなかったユーザーに、お求めいただきたいクルマなのですから。
「違和感がない」といえば、前席下のバッテリー残量が減り、1.2リッターエンジンが発電機を回して充電を始めても、ドライブフィールが自然なのには感心しました。
試乗前には、エンジンは直接駆動に関係しないので、ドライバーの運転操作、クルマの加減速には「我、関せず」で、ひたすら効率のいい回転数のまま回り続けるのかと内心、期待(!?)していました。ところが、発電機を稼働中の1.2リッター直列3気筒は、ドライバーのアクセル操作にキチンと反応し、エンジン音の高まりを変化させるではありませんか!
これが、運転操作に関係なく、終始、一定の音量でエンジンがうなったままだったら、いかな防音・吸音素材を使って騒音を抑えたとしても、耳について仕方なかったでしょう。“効率”と“自然な運転感覚”のバランスをどう取るか? パーツは異なれど、CVTが登場した頃にも同じような議論が交わされました。ノート e-POWERは、なかなか上手な着地点を見つけたようです。