【日産 GT-R ニスモ試乗】良好な乗り心地に驚き。公道/サーキット両用のスーパーカー

かつて、GT-R ニスモといえば、2013年にミハエル・クルム選手がドイツ・ニュルブルクリンクでタイムアタックをした、まさにそのGT-Rと同じ仕様に仕上げられる「GT-R ニスモ N アタックパッケージ」(2017年モデル用は2017年春に発売予定)という、とんでもないスペシャルサービスを提供し、世のクルマ好きの度肝を抜きました。

しかし、GT-R ニスモは、通常のカタログにも掲載される、GT-Rのいちグレード。「ノート ニスモ」や「ジューク ニスモ」などと同じく、ニスモのコンプリートカーとしての位置づけです。

2017年モデルの基本的な改良点は、ノーマルGT-Rのそれらに準じますが、フロントには、独特の形状を採るバンパーが与えられ、ニスモ仕様であることを主張します。カーボンファイバーシートを幾層にも重ねて作られた、手の込んだ一品です。エアダム下部のカナード部分が赤くペイントされていて、うーん、カッコいい!

さらに、サイドスカート(サイドシルプロテクター)、リアバンパー、そしてリアウイングにも専用品が装着されます。300km/h走行時には「ノーマルGT-R+100kgのダウンフォースを発生させる」そうです。さすがはニスモ。伊達にスーパーGTに出場していませんね!?

日産 GT-R ニスモ

ドアを開ければ、レザーと赤いアルカンタラを用いた、ニスモ専用のレカロ製カーボンバケットシートが迎えてくれます。パッと見、背もたれ、座面とも、サイドサポートの張り出しは控えめですが、しっかり体をホールドしてくれる上、存外クッションが厚くて、座り心地のいいシートです。

日産 GT-R ニスモ

加えて、ステアリングホイール、インストルメントパネル上面、そして、Aピラー内張りから天井にかけて、マットブラックのアルカンタラが貼られます。シックで贅沢な室内ですね! 随所に使われるアクセントカラーの“赤”と呼応して、これまたカッコいいこと!!

日産 GT-R ニスモ

ベーシックな機能改良としては、センターコンソール上部の液晶画面が7インチから8インチに拡大され、トンネル側のカーボン製センターコンソールに、ナビなどを手元で操作する“マルチファンクションスイッチ”が設けられました。また、パドルシフトがステアリングホイールといっしょに回るタイプに変更されたのも、ノーマルGT-Rと同様です。

いざ走り始めると、「アレ!?」と戸惑う乗り心地の良さ。いうまでもなく、ニスモの手が入って相応に締め上げられたスポーティな足回りで、路面の大きな凹凸ではそれなりにハーシュ(突き上げ)を伝えますが、総じてサスペンションがよく動き、乗員を無粋に上下に揺すったりはしません。

日産 GT-R ニスモ

新しいGT-R ニスモに採用されたビルシュタインのダンパーは、より多様なシチュエーションに応じてダンピングを変える“モード設定型電子制御式”に進化したといいます。セットアップスイッチで設定する3段階を超えて、路面状況、走行条件に対応できるのでしょう。

こうした専用チューンを受け止めるボディそのものも、ニスモ専用品です。フロントのウインドウフレームが強化されたのをはじめ、ボディ各部に構造用接着剤が用いられ、ボディ剛性をさらにアップ! ちなみにトランクリッドは、ドライカーボン製となります。

レースフィールドからのフィードバックを謳う大径タービンを備えた3.8リッターV6ターボは、ノーマルGT-Rより30馬力アップの600馬力/6800回転の最高出力、1.5kg-m太い66.5kg-m/3600〜5600回転の最大トルクを発生します。

日産 GT-R ニスモ

普通に運転している時には、3.8リッターの排気量を活かした大トルクに乗った安楽ドライブも可能。100km/h巡航では2000回転付近で、ターボエンジンは鼻歌を歌っています。それでも、十分に速いのですが、いざ、心を決めて(!?)アクセルを踏み込み、回転計の針が4000回転を超えると、GT-R ニスモは全く別の顔を見せます。

低回転走行時の、キッチリ仕事はしますがどこかご大尽風の鷹揚なフィールは影をひそめ、ペダル操作に俊敏に応える、鋭いスーパースポーツ本来の姿が現れます。にわかにボディの大きさが感じられなくなり、GT-R ニスモはドライバーの運動能力をありえないほど拡張するバトルスーツに変身する…といったら大袈裟に過ぎましょうか。

なるほど、これはGT-R ニスモを“装着して”大暴れしてみたくなります! ただし、2速ギヤでエンジン回転計をフルスケール回すと、すでに100km/hを突破してしまいますから、存分に楽しむためには、サーキットに持ち込むしかありません。

GT-R ニスモは、エンジンのアウトプット増大に合わせた専用燃料ポンプ、増大した熱量には、冷却水の加圧式リザーバータンクが与えられます。ストッピングパワーは、強力なブレンボ製のモノブロックキャリパー(フロント:6ポッド/リア:4ポッド)が提供します。これなら“吊るし”の状態でも、サーキットでのスポーツ走行に余裕で対応できるはず。

日産 GT-R ニスモ

ほどほどにジェントルな乗り心地を得た2017年モデルは、水陸両用ならぬ、公道/サーキット両用のスーパースポーツといえましょう。

蛇足ながら「姿カタチはノーマルのままで」、または「サーキットにガンガン持ち込みたいので、もう少し余裕を持って購入したい」という人には、「トラックエディション engineered by ニスモ」も用意されます。ノーマルGT-Rに、ニスモ仕様のボディと足回りを与えたモデルです。価格は、GT-R ニスモより500万円ほどお安い、1369万9800円となります。

<SPECIFICATIONS>
☆GT-R ニスモ<MY2017>
ボディサイズ:L4690×W1895×H1370mm
車重:1740kg
駆動方式:4WD
エンジン:3799cc V型6気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:600馬力/6800回転
最大トルク:66.5kg-m/3600〜5600回転
価格:1870万0200円

(文&写真/ダン・アオキ)


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