【マツダ ロードスター RF試乗】13秒で開閉!流麗なクーペと爽快なオープンが1台に

「より多くの人々にオープンカーの楽しさを届けたい」と謳うロードスター RFは、流麗な“ファストバック”スタイルを採ります。ハードトップを閉めたクローズド状態では、リアに向かってなだらかに傾斜するクォーターピラーが、とってもス・テ・キ。スイッチひとつで、天井部とリアウインドウがキャビン背後に収納されます。

マツダ ロードスター RF

気になるラゲッジスペースの容量は、ソフトトップのロードスターと同等の127リッターを確保。国際線の機内へ持ち込みが可能なキャリーオンバッグを、ふたつ積むことができる大きさです。

マツダ ロードスター RF

今回、市販モデルのデリバリーに先立ち、最終的なプロトタイプに試乗することができましたので、その印象を報告しましょう。

いきなり昔話でナンですが、10年ほど前のこと。2006年に“NC型”こと先代ロードスターにリトラクタブルハードトップモデル「ロードスター RHT」が加わった時には、複雑な気持ちを覚えました。

RHTに先立つこと1年。2005年にデビューした3世代目のロードスターは、開発陣が一丸となり、パーツごとにグラム単位で重量を削ってようやく成立させたクルマでした。それなのに、いかな流行の車型とはいえ、わざわざ重たい電動ルーフを載せることはないのではないか、と。

ところが、いざフタを開けてみれば、RHTロードスターは、ソフトトップを上回る人気を博したのです! 販売台数でも、RHTの優勢は続きました。登場直後の、一時的な現象ではなく。「ロードスターを存続させるためには、このモデルが必要なんです」と力説していた担当エンジニアの方の意見は、全く正しかったわけです。

スポーツカーの開発にはピュアな気持ちが大切ですが(本当)、「売れなければ続かない」という、当たり前だけれど厳しい現実にも向き合わなければならない。3世代目ロードスターは、その壁を見事に乗り越えました。感服。

もはや“派生車種”とは呼べない重要なバリエーションとなった電動ハードトップモデルですから、現行の4世代目ロードスターでは、開発当初からプログラムに載っていました。

ロードスター RF プロトタイプ試乗会場で「技術者というのは『作れ!』といわれれば、どんなものでも作ってしまうものなんです」と、マツダの人が笑いながら見せてくれたのが、可動式ハードトップの白い模型でした。

マツダ ロードスター RF

ルーフ全体が細かく8分割されていて、これならピラーを残さず、すべてキャビン背後に格納できます。ただし、構造が複雑になりすぎる上に、何より、クローズド時のスタイルがいまひとつ…。あえなくお蔵入りとなりました。

ロードスター RFの、あえてピラーを残したファストバックスタイルは、ソフトトップ仕様のデザイン上の制約から「仕方なく採用された」のではなく、「誰もが美しいと思える“小さな”スポーツカー」として表現されたカタチなのです。なるほど、ルーフを閉じた状態のロードスター RFは、特に斜め後ろから見ると、胸打たれる魅力があります。

マツダ ロードスター RF

今回ドライブしたグレードは「VS」(6MT)。RFのラインナップの中で、ナッパレザーシートをおごった豪華バージョンです。寒い時期にはありがたいシートヒーターも、標準で装備します。

海外向けには、RFにもソフトトップモデルと同じ1.5リッターエンジン(131馬力/15.3kg-m)を載せたモデルをラインナップする市場もありますが、日本向けRFのエンジンは、2リッターの4気筒(158馬力/20.4kg-m)のみ。1.5リッターのソフトトップモデルより、価格で50万円前後高く、ドライブフィールもちょっと大人の雰囲気です。

マツダ ロードスター RF

RF VSの車重は1100kg。ソフトトップの「S レザーパッケージ」(6MT)が1020kgですから、80kgほど重くなった計算です。それでもパワーウエイトレシオは、7.8kg/馬力に対し7.0kg/馬力と、優位に立っています。その上、6MTのギヤ比は、ファイナルを含めて両車共通。RFのアウトプット増加分は、そのまま加速性能に上乗せされることになります。

RFの重量増加について付け加えますと、ハードトップ化による増加は約45kg。エンジンの2リッター化で14.2kg。タイヤの17インチ標準化で3.9kg(4本合わせて)。燃費が17.2km/Lから15.6km/Lに低下したことに対応し、燃料タンクの容量を5リッター増の45リッターにしたため、プラス3.4kg。さらに、ソフトトップモデルではオプション扱いのエネルギー回生装置“i-ELOOP”をRFでは標準化。これが意外に重く、20kgの増加となりました。随分重くなったようですが、でも、オプション装備をおごったソフトトップモデルと比較すると、大人ひとりを余分に乗せているレベルです。

変化したウエイト、重心高の高まりに合わせ、足回り、ボディを含め、ロードスター RFにはしなやかに入力をいなすセッティングが施されました。走りは穏やかでスムーズ。ベストな排気量の1.5リッターユニットをブン回して走るのも痛快だけれど、多少の余裕を得たロードスター RFの、スポーティでありながら落ち着いたフィールも、いいですね。クルマの性格に見合っています。

マツダ ロードスター RF

安全な場所に停車し、いざ、オープンボタンを操作すると、電動モーターが静かにハードトップを畳んでいきます。公称値13秒、実測で14秒弱。ルーフの切り欠き形状まで“美しさ”を考慮して設計された屋根の開閉は、むしろ外から見て鑑賞したい完成度の高さ。最後に「スッ」とパーツが収まる様が、ビューティフル!

マツダ ロードスター RF

ルーフ部の製作は、リトラクタブルトップの手練れにしてドイツの名門・ベバスト社が担当します(ベバストジャパンは、なんと広島にあるのです!)。

RFで特徴的なのが、風の巻き込みを嫌うなら残しておいた方が有利なリアウインドウ。それを、あえて可動式にしたところが、いかにもオープンスポーツを作り続けてきたメーカーの判断です。ロードスターオーナーの気持ちがよく分かっている。これなら、前を向いて運転していれば、残ったピラーは気になりませんし、一方、適度に髪が風になぶられて、オープンエアドライブを実感できるんです!

“庶民派スポーツカー”というには、ギリギリの価格帯に上がってきたロードスター RF。でもまあ“流麗なクーペ”と“爽快なオープンスポーツ”を一度に手に入れられると考えれば、リーズナブルかもしれませんね。

マツダ ロードスター RF

<SPECIFICATIONS>
☆ロードスターRF VS(プロトタイプ)
ボディサイズ:L3915×W1735×H1245mm
車重:1110kg
駆動方式:FR
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6MT
最高出力:158馬力/6000回転
最大トルク:20.4kg-m/4600回転
価格:357万4800円

(文&写真/ダン・アオキ)


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