実用的な商用車として生まれたカングーは、日本車でいえば、軽トラックやバンのような位置付け。それでいながら、日本で“おしゃれグルマ”としての地位を獲得しているのは、フランス生まれというルーツと無縁ではないでしょう。国産ミニバンのような広大な空間を欲しつつ、ありふれたミニバンとはひと味違うデザインを求める人たちから、絶大な人気を得ているのです。
カングーの魅力は、なんといってもそのユーティリティスペースの広さ。“遊びの空間”を意味する“LUDOSPACE”というキャッチコピーのとおり、さまざまなアイテムを載せられます。
両側スライドドアからアクセスするリアシートは、大人3人がラクに乗れる余裕があり、足元も広々。そして、リアのシートバックを前方に畳むと、広大な荷室スペースが出現します。さらに、(グレードによりますが)助手席も前方に倒せるので、2.4mの長尺物まで積み込めてしまいます。
実際、自転車2台とキャンプ用具などを積み込んだことがありますが、大径タイヤのロードバイクを2台とも、タイヤを外すことなく積み込めました。しかも、リアシートをひとり分活かした状態で。
さらに助手席まで倒せば、中型のオートバイなども積めてしまいそうです。そんな使い方をする人はまれかもしれませんが、工夫次第で自分の積みたいモノを積める、遊びの空間を作れてしまうのが魅力です。
そんな、国産ミニバンを超えるユーティリティスペースを持ちながら、ミニバンとは一線を画す走行性能を実現しているのも、カングーの魅力。
ドライバーズシートに座ると、着座位置が乗用車のそれに近く、重心が低いのが分かります。重心の低さはカーブを曲がる際などに顕著に感じられ、ハンドルを切ると車体はロールするものの、その挙動はゆっくりで、グラグラするような感覚がはありません。こうした、硬いわけではないけれど挙動が絶妙に穏やかな足回り、などは、年間12万kmも走るといわれる郵便配達において培われたものといいます。
今回ドライブしたのは、そんなカングーに新しく追加された「ゼン EDC」というグレード。115馬力を発揮する1.2リッターのターボエンジンに、デュアルクラッチ式の6速EDC(エフィシエント デュアル クラッチ)トランスミッションという、現代的なパワートレインを搭載しています。
流行りのダウンサイジングターボらしく、1750回転という低い回転数で最大トルクを発揮するため、1450kgの車体をキビキビと加速させます。決して速いわけではなく、エンジンも回して楽しい特性というわけではありませんが、クルマが意のままに動いてくれる感覚は、運転していて楽しい限り。この楽しさと、広い空間を両立している点が、カングーの最大にして無二の魅力でしょう。
個人的には、シートを外すことなく自転車やバイクを積載できる上に、大人4人が不満なく乗れ、おまけに、運転も楽しめるカングーが、かなり欲しくなりました。
暮らし方や趣味などに合わせ、あれやこれやと使い方のイメージを膨らませられるのが、カングーが支持され続ける最大の理由かもしれませんね。
<SPECIFICATIONS>
☆ゼン EDC
ボディサイズ:L4280×W1830×H1810mm
車重:1450kg
駆動方式:FF
エンジン:1197cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:115馬力/4500回転
最大トルク:19.4kg-m/1750回転
価格:259万円
(文/増谷茂樹 写真/増谷茂樹、&GP編集部)
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