雨に強い新品タイヤでセーフティドライブ to You、ツーユー、梅雨?

突然ですが、ここで個人的な思い出話です。忘れもしない梅雨どき。雨の首都高速3号線上り。飯倉方面へ向かって谷町ジャンクションの分岐を右にターンしていると、突然、4輪が道路の上を滑りだしたのです。ステアリングも、ブレーキも反応しません(汗)。前を走るクルマにぶつかるか、壁にぶつかるかさえ、自分には選択権が与えられていない状態に…。

観念しながら衝撃に備えていると、道路にかすかに上り勾配がついていたこともあり、減速するとともに自然にタイヤのグリップが回復し、アクシデントを間一髪、逃れられました。

航空機でいえば、間違いなく重大なインシデントに分類される事象だったはずです。

交通量が多く、スピードも出ていなかったのに、なぜ? 理由は、タイヤの溝が浅くなっていたから。

では、タイヤの溝が浅くなると、なぜ胆を冷やすような事態になってしまうのか? そんな疑問に答える体験会が、ブリヂストンのテストコースで行われました。

2つの体験シーンから、かつての自分を戒めてみたいと思います(すでに反省していますが)。

シーン1:溝のない古いタイヤはドライバーのいうことをきかない

新品タイヤを履く白いセレナ。狙った通りのラインをキープしています

新品タイヤを履く白いセレナ。狙った通りのラインをキープしています

コースには、2台の日産「セレナ」が用意されていました。白い車両は新品タイヤを、もう1台のシルバーは磨耗したタイヤを履いています。磨耗したタイヤは溝がほぼゼロ…。

40km/hのスピードで、水を撒いたコーナーに進入、両車の違いをチェックします。

まずは新品タイヤを履いた白いセレナから。コーナーを曲がりながら、ドライ路面からウエット路面へノーブレーキで進入。ヒヤリとする瞬間もなく、ドライバーが意図したとおりのラインに沿って何事もなく走り抜けました。

続いて、磨耗したタイヤを履くシルバーのセレナへ。同じようにウエット路面に入った瞬間、先ほどとは違って大きく外側へと飛び出しました。この時のテストドライバーの言葉をそのままいただくと…。

「ステアリングの手応えが“スカスカ”になる」とのこと。ステアリングを切り足してもタイヤは無反応。完全無視です。

実は、舗装路だけを走る場合、雨さえ降らなければタイヤの溝は不要なのだとか。レース用のスリックタイヤと同じですね。溝がないと接地面積が増えて、安定性が増すのです。タイヤの溝は、路面との間の水を掃き出すために付いていますが、悩みどころは、溝を増やすと排水性がアップするものの、接地面積が減ってしまう点。タイヤ1本当たりの路面との設置面積は、「わずかハガキ1枚分」。それだけに、いかに少ない溝で、グリップ力をキープしながら排水性をアップさせるか、これが、最新タイヤのトレッドパターンをデザインする上での重要事項となるそうです。

シーン2:新品タイヤであってもウエット性能には優劣がある

ガガガとタイヤが路面をグリップする感触が伝わった白いプリウス

ガガガとタイヤが路面をグリップする感触が伝わった白いプリウス

次のテストは、新品のタイヤだったらなんでもOKか? というもの。そこで今度は、新品タイヤを履かせた2台のプリウスを用意。白いプリウスにはウエットグリップ性能に優れ、転がり抵抗係数の低いタイヤを。シルバーのプリウスには、どちらもソコソコのタイヤを、それぞれ履かせています。

ちなみにタイヤには、転がり抵抗性能とウエットグリップ性能をグレーディング(等級制度)する仕組みがあり、ラベリング性能といっています。このラベリング制度でいえば、白いプリウスが履くタイヤは、転がり抵抗性能が「AAA」でウエット性能が「a」。シルバーのプリウスが履くタイヤは、転がり抵抗性能が「A」でウエット性能が「c」のものでした。

前置きが長くなりました。2台のプリウスで比較するのは、ウエット路面での制動距離。まずは白いプリウス。深さ10mmの水を張った路面で急ブレーキをかけます。

加速して一定速にしてからウエット路面に進入。激しく水しぶきが上がったところでフルブレーキング。

「ガガガガ」と、ブレーキを踏んだ瞬間に制動Gが立ち上がりました。カラダがつんのめるような衝撃。シートベルトが肩に軽く食い込みます。そして、止まる瞬間もガガッとゴムが路面をつかんでいるフィーリングが伝わってきます。仮にパニックブレーキを踏んだとしても、シッカリと止まってくれそうな安心感があります。

一方、シルバーのプリウスは、フルブレーキでも先ほどのようにカラダが前につんのめるような感触が少なめ。その分、ダラダラとウエット路面を滑っていくようなフィーリング。制動距離も、白いプリウスと比べて明らかに長いのでした。

少々長くなってしまいましたが、まとめさせていただきます。まずは、愛車のタイヤの溝が減っていないかどうか、チェックしましょう。そして、減っていて交換が必要な場合は、ウエット性能に優れるものを選びましょう。これが、梅雨どきをはじめとする悪天候の日でも、安全にドライブを楽しむための第一歩なのです。

(文・写真/ブンタ)

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