芥川は
芋粥とは山の芋を中に切込んで、それを甘葛の汁で煮た、粥のことを言うのである
と説明しています。
今回はヤマノイモ属の中では最も手に入りやすい長芋を使いました。
“あまずらみせん” ともいう甘葛の汁でできた甘味料は、残念ながら現代ではほぼ消失してしまったものです。
同じく樹液から作られる甘味料ということで、メープルシロップを使ってみました。ただ、メープルはかなり風味が強いので砂糖と混合します。
イモは
薄刃を器用に動かしながら、片端から削るように、勢いよく切る
とのこと。勢いよくというのはちょっと難易度が高いので、普通に鉛筆を削るようにそぎ切りにしました。
水を沸かし、メープルシロップと砂糖で好みの甘さを作ります。
そこにイモを入れて、歯ごたえを残す程度にサッと煮。
できた! 超かんたん!
そしてこれが意外に美味しい。ちょっとマズければと面白いとも思ったのですが(失礼)、いい意味で普通にイケちゃうのです。
さらりとした甘みの汁と、芋のシャクっとした歯触り。上品な汁粉のように食べられます。温かなスイーツなので、晩秋から冬にかけてはぴったりです。
もちろん、芋も甘味料も平安のそれとは違うのですが、たぶん面影くらいは感じられたはず!
芥川の小説は、文学作品として深刻に感じ入る楽しみかたもいいのですが、普通に純粋にかなり「面白い」ので、学生以来手に取っていないという方、ぜひ読み直してみてはいかがでしょうか。
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(取材・文/くぼきひろこ)
美食・カルチャー・ライフスタイル・クルマ・ゴルフ・巷の美女etc……対象は様々に、雑誌・ウェブサイト等の各種媒体にて活動中のフリーライター。「人の仕事のすべて。そして、その仕事から生み出されるすべてのモノゴトが面白い!」と津々浦々の興味津々で取材・執筆を行う。
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