800種類以上ものバリエーションをルーティンで作る。それだけでもすごいのに、納期もお客様と約束したなるべく短いタイミングで作るのがアイシン精機のベッドの特徴。好きなものを作ってもらえるからといって、納期が3カ月先も4カ月先、なんていうのはダメですからね。
そこでアイシン精機が、自動車部品作りのノウハウを活かして実現しているのが、ジャストインタイムな“デイリーオーダーシステム”。
アイシン精機では、1日に平均150ユニットの寝具を製作していますが、淀みなく続く生産フローを支えているが“生産指示カード”と呼ばれるもの。一般的に“かんばん方式”と呼ばれているものと同等です。
この生産指示カードに基づき、ファクトリー内の人と設備、パーツと方法が最適に構成されているわけです。説明ではなんとなく分かったような気になるのですが、実際の生産工程を拝見すると「なるほど!」とうなずかされます。
生産指示カードには、製品の仕様が書かれています。先ほどのファインレボも、マット全体に内蔵された製品もあれば、腰など一部分だけ使用されたものもあります。このカードに基づき製品が出来上がっていくのですが、各工程で必要なパーツがタイムリーなタイミングで生産・供給されるのはお見事。
生産を担当されている方は、手を止めることなくリズミカル。はかどる感じです。よく見ると、マットレスを回転させたり、裏返したりといったアクションを、機械が上手にアシスト。この辺りにも、独自のノウハウを感じさせられます。
しかし、いろんなものをランダムに作っています。全く同じ製品を作るのなら、今日作る分だけをまとめて一気に作っても良いのでは?
例えば、ウチの近所の中華料理店のオヤジさんは、忙しいランチ時などにタイミングよく、2、3人からまとめてチャーハンのオーダーが入ると、とてもうれしそうです。いっぺんに炒められますからね。回鍋肉→チャーハン→回鍋肉→チャーハン→回鍋肉→チャーハンより、回鍋肉×3人前→チャーハン×3人前の方が、よほど効率良くて楽ですからね。
…って、ハナシがちょっと脱線しちゃいましたが、でも、アイシン精機のベッド製造では、そのようなこと、やっていないのです。なんで?
「朝には、その日に作る製品量はそろっていますが、このカードの並び、つまり生産する順序は、出荷先ごとなのです。遠くのエリアに発送するものは、早く作って早く出荷する必要がありますから」
なんと、ジャストインタイムを追求するために、作るものがランダムになったとしてもいとわない、とは…。
まとめますと、MAX1200種類にもなるバリエーションから、1日平均150ユニットを、遠くの出荷先を優先してランダムに作っている、というわけです。
作っているものが見事であれば、その作り方もまたお見事。ベッド生産においても50年以上の歴史を持つアイシン精機の作るものは、それがなんであろうと、日本のモノづくりの誇りがもれなく付いている感じがします。
(文/ブンタ 写真/江藤義典)
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