ザクザクと雪を踏みしめながら試乗車(量産前確認車)に近づき、クルマに乗り込んで、ステアリングホイールを握ったとたん「オオッ!」と驚きました。ハンドルのリムが温かい!! 今度のCX-5には、(グレードによって)ステアリングヒーターが装備されるのですね。「かつては豪華SUVの代名詞、レンジローバーならではの贅沢装備だったのに…」と、うれし涙で袖を濡らしました(やや誇張しております)。
2世代目となる新型CX-5は、トリムレベルによって大きく3種類に分かれます。17インチタイヤを履く「ベーシック」グレード、ホイールが19インチになり、数々の運転支援機能を搭載する「PROACTIVE(プロアクティブ)」、そして、レザー内装やリアのパワーゲートなどがおごられた「Lパッケージ」です。このうちステアリングヒーターは、Lパッケージに標準、PROACTIVEではオプションで装備されます。
エンジンは、2リッター(155馬力/20.0kg-m)と2.5リッター(FF:190馬力/25.6kg-m、4WD:184馬力/25.0kg-m)、2種類の4気筒ガソリンエンジンと、2.2リッターのディーゼルターボ(175馬力/42.8kg-m)が用意されます。トランスミッションはいずれも、6速ATです。
価格は、ガソリン車が246万2400円〜321万3000円。ディーゼルは277万5600円〜352万6200円。中堅どころの25S PROACTIVE(4WD)が291万6000円、ディーゼルのXD PROACTIVE(4WD)が322万9200円ですから、旧型末期より多少値上がりしているものの、新技術満載で装備も充実しているので“リーズナブルな設定”といっていいのではないでしょうか。
新型CX-5の駆動方式は、先代同様、2リッターモデルはFF(前輪駆動)のみ。2.5リッターとディーゼルには、FFに加え4WDがラインナップされます。個人的には、20万円ほど割高になりますが、もし選べるなら、ぜひ4WDをオススメします。
雪や氷にまで至らなくても、例えば、突然の豪雨といった急激な路面変化が起こった場合に、4輪駆動の方が安全のマージンが大きいからです。さらに“i-ACTIV AWD”ことマツダの4WDシステムには、面白い特徴があります。本気で「FFモデルよりも燃費を良くしよう!」とトライしているのです。
つまり、前輪駆動モデルでは、路面の状態によっては、時にタイヤが空転して駆動力を逃がしてしまいます。4WDなら、その力を後輪に送って、路面を蹴ることができる。無駄なく駆動力を活かせるわけです。
しかし、4輪駆動システムは、複雑で重くなりがち。i-ACTIV AWDは、エンジンから取り出された動力が、プロペラシャフトを介してリアデフ直前の電子制御式の多板クラッチに伝えられ、必要に応じてリアタイヤを駆動する、という仕組みを採ります。構造自体は比較的コンベンショナルなものですが、一方で、マツダは過剰なスポーツ性や悪路走破力を捨て、システム全体の軽量化を目指しました。カタログ上で、FFと4WDモデルの重量差は50kgほど。小柄な人をひとり、余分に乗せている程度の計算です。
ベーシックなディーゼルモデル「XD」(17インチ)では、FF車のカタログ燃費が18.0km/L、4WDが17.6km/Lと、燃費が伯仲しています。これなら、ちょっと路面状況が悪化した時など、十分、逆転が考えられます。
ちなみに、先代モデルの実燃費を、ユーザー参加型の燃費サイト「e燃費」(e-nenpi.com)で確認したところ、ディーゼルのFFは13.88km/L、4WDは13.25km/Lと肉薄しています。
ニューCX-5は、i-ACTIV AWDにさらに磨きをかけ、従来、ローラーベアリングを用いていた箇所を、より抵抗の少ないボールベアリングに置き換えています。約30%の抵抗減を果たし「実用燃費は約2%向上した」とのこと。
残念ながら、カタログ燃費は後輪を固定したFF状態で計測するため、今回の改良が燃費欄の数値に反映されることはありませんでしたが、実燃費は期待できそうです。特に、ニューCX-5のディーゼルモデルに食指を伸ばしている方、一度、4WDバージョンを検討してみてはいかがでしょうか?
ディーゼルエンジンにはもちろん、マツダ自慢の“ナチュラル・サウンド・スムーザー”、“ナチュラル・サウンド・周波数コントロール”といった静音化の技術が採用され、また“DE精密過給制御”によって、スロットル操作に忠実に反応するようになっています。ディーゼルモデルの魅力が、一段と増しているのです。
マツダの注目技術である“Gベクタリング・コントロール”も導入されました。直進走行時を例に挙げましょう。路面の微少な変化に対応し、ドライバーが“無意識のうちに”ステアリングを修正しようとするまさにその瞬間、1000分の5秒単位で介入し、これまた気づかぬうちに修正を終えてしまうという、恐るべき技術です。
具体的には、ステアリング操作に反応してエンジン出力をわずかに絞ってやる。その結果、前輪への荷重が発生して「舵の利きが良くなる」のです。センシング技術とエンジン制御技術が大幅に底上げされたからこそ、実現した機能といえます。
今回のような雪上路では、Gベクタリング・コントロールの霊験あらたか。直進では安定し、カーブでは外側への膨らみが抑えられます。丁寧に運転してやれば、これまで以上にスムーズに狙ったラインをたどれます。i-ACTIV AWDにGベクタリング・コントロールが組み合わされれば、まさに鬼に金棒ですね!
最後に、雪上の峠道(!?)をドライブした時の印象をお伝えします。まず、ステアリングホイールを握ったのは、XD LパッケージのFFモデル。いうまでもありませんが、Gベクタリング・コントロールといえども、物理の法則を超越するものではありません。落ち着いて運転していれば、FFとは思えぬ安定した走りを見せますが、少し速度を上げると、さすがに修正舵を当てるのに忙しくなります。
続いて、4WD版のXD Lパッケージをドライブすると、安心感のレベルがひとつ上がった感じ。足もとしっかり、安定した速度でコースを進むことができます。クローズドコースであるのをいいことに、少々プッシュして走ってみると、ニューCX-5、なかなかスポーティです!
いうまでもなく、CX-5はエンジン横置きレイアウト、FFベースの4WDモデルですが、スロットル操作で後輪を振り出す、なんてことも可能です。CX-5のアグレッシブな反応に気を良くしてさらにプッシュすると…「おっとっと」と肝を冷やすその瞬間に“DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)”が介入し、乱れた挙動を正してくれました。そのタイミングが、また絶妙!!
安心感高く、実際に走りが安定していて、その上、十二分にスポーティ。ますますi-ACTIV AWDモデルをオススメしたくなりました。果たして、普通のドライ路面ではどうなのでしょうか? 新型CX-5への興味は、いや増すばかりです!
<SPECIFICATIONS>
☆XD Lパッケージ(FF)
ボディサイズ:L4545×W1840×H1690mm
車重:1620kg
駆動方式:FF
エンジン:2188cc 直列4気筒 DOHC ディーゼルターボ
最高出力:175馬力/4500回転
最大トルク:42.8kg-m/2000回転
トランスミッション:6AT
価格:329万9400円
<SPECIFICATIONS>
☆XD L パッケージ(4WD)
ボディサイズ:L4545×W1840×H1690mm
車重:1680kg
駆動方式:4WD
エンジン:2188cc 直列4気筒 DOHC ディーゼルターボ
最高出力:175馬力/4500回転
最大トルク:42.8kg-m/2000回転
トランスミッション:6AT
価格:352万6200円
(文&写真/ダン・アオキ)
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