【検証2016年の注目車】スバル「インプレッサ」の評価はなぜ高いのか?

2016年10月に販売がスタートした5世代目インプレッサのボディ形状は2タイプ。先代モデルと同様、5ドアハッチバックが「インプレッサ スポーツ」、4ドアセダンが「G4」を名乗ります。

最大のトピックとしては、クルマの根幹を担うプラットフォームが一新されたことでしょう。新設計となる“スバルグローバルプラットフォーム”の採用により、車体のねじり剛性やサスペンションの支持剛性などが格段にアップしたことに加え、従来に比べて1.4倍の衝突エネルギーに対応するなど、安全性の向上も図っています。

スバル New インプレッサ

また、スバルが特に力を入れている安全装備については、“歩行者保護エアバッグ”を国内メーカーとして初めて採用したのがトピックといえるでしょう。これは、歩行者との衝突を検知すると、ボンネット後端よりエアバッグが展開。ピラーやガラスといった硬いパーツを覆うことで、歩行者の頭部が受ける衝撃を緩和するという仕組み。クルマ対歩行者の事故が多い日本では普及が望まれる装備ですが、インプレッサでは全グレードに標準装備としたことが、高く評価されるべきポイントです。

スバル New インプレッサ

もちろん“プリクラッシュブレーキ”や“全車速追従機能付クルーズコントロール”などからなる、運転支援システム“アイサイト”は、最新のver.3を搭載しており、予防安全にも抜かりはありません。

エンジンについては、従来どおり水平対向の4気筒DOHCで、1.6リッターと2リッターの2本立てという布陣。FB16型、FB20型ともに、形式名は従来のそれを継承していますが、中身の8割を新設計して軽量化図ったことに加え、2リッターは直噴化するなど、多岐にわたる改良が施されています。

トランスミッションは“リニアトロニック”と呼ばれるCVTに一本化されましたが、こちらも軽量化や静音化を図ったほか、変速範囲を拡大しています。これにより、発進時はより力強く、高速巡航時は低燃費に、といった具合に、メリハリの利いた走りを実現しています。

というのが、今回のモデルチェンジにおいて注目すべきポイント“座学編”といったところ。では、実際に走り出してみましょう…。

今回ドライブしたのは「インプレッサ スポーツ2.0i-Lアイサイト」に、オプションの“ブラックレザーセレクション”と“アドバンスドセイフティパッケージ”を装着したモデル。

スバル インプレッサ スポーツ

本革仕立ての8ウェイパワーシート、後側方警戒支援システムなど、快適装備も安全装備もほぼ“全部盛り”という仕様で、スポーティな仕立てのグレード「2.0i-Sアイサイト」とは“アクティブトルクベクタリング”が非装着であることと、ホイールが1インチ小さな17インチとなるのが、おもな相違点です。

車格に対しては大きく、重厚な掛け心地のシートに腰を下ろし、真っ先に感じるのは室内の“広さ”です。空間そのものはもちろん、運転席からの視界もぐっと広くなっています。

スバル インプレッサ スポーツ

車体サイズはというと、全長4460mm、全幅1775mm、全高1480mmと、先代モデル比で全長プラス40mm、全幅プラス35mm、全高プラス15mmほど拡大されました。しかし、頭上や両肩まわり、足もとスペースなどは、外寸から想像する以上のゆとりを感じられるのです。

室内寸法はというと、室内長は2085mmで先代比プラス80mm、室内長は1520mmで先代比プラス30mmですから、実際に広くなってはいますが、Aピラー内側の処理やダッシュボード形状による違いなのか、視界を含めての“広々感”は、格段にアップしています。天地方向にも左右方向にも開けた視界は、爽快感につながるのはもちろんのこと、周囲の状況を素早く把握できるので、初めてのドライブでも不安を感じることは少なそうです。

さて、エンジンをスタートさせると、静粛性も大きく向上していることに気づきます。かつてスバルといえ“ドコドコドコ…”という水平対向エンジンならではの鼓動が感じられ、それが個性だという意見もありました。しかし、こうした音や振動は先代モデルで大幅に低減され、さらに新型では、車両全体の静粛性が引き上げられた結果、車外から侵入してくる音量そのものが、低く抑えられています。

2リッターエンジンは、最高出力154馬力、最大トルク20.0kg-mですから、絶対的な加速はクラスの水準、というレベルです。しかし、アクセルペダルを大きく踏み込めば、心地よいビート感あふれるサウンドと、スバル製の水平対向エンジンらしいスムーズな吹き上がりを楽しめます。

スバル インプレッサ スポーツ

走行性能を使い分けられる“SIドライブ”の「Sモード(スポーツ)」をセレクトすれば、トルク感もアップ。回転のピックアップもグッとシャープさを増します。加えて、リニアトロニックはアクセル開度が大きくなると、多段ATのようなステップ変速に切り替わるので、加減速のテンポをつかみやすく、ワインディングロードもしっかり満喫できそうです。

スバル インプレッサ スポーツ

乗り心地はというと、ひとクラス上がったかのような上質さが印象的です。街中でも高速道路でも荒れた舗装路でも“ザラザラ”、“ゴツゴツ”といった安っぽい感触がステアリングやフロアに伝わることはありません。とはいえ、ただ単に足まわりがソフトというわけではなく、高速道路の進入路のような深いコーナーで“もうひと声”とばかりに追い込んでも、じわりと踏ん張りながらノーズがググッとインを向く、懐の深さも持ち合わせています。

スバル インプレッサ スポーツ

なんともスバルらしい、堅実さを感じる正常進化。新型インプレッサは見た目の変化こそ控えめですが、中身はプレミアムコンパクトと呼ぶにふさわしいレベルアップを果たしているのです!

<SPECIFICATIONS>
☆スポーツ 2.0i-Lアイサイト
ボディサイズ:L4460×W1775×H1480mm
車両重量:1370kg
駆動方式:AWD
エンジン:1995cc 水平対向4気筒 DOHC 16バルブ
最高出力:154馬力/6000回転
最大トルク:20.0kg-m/4000回転
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
価格:237万6000円

(文&写真/村田尚之)


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