2015年2月に販売がスタートしたCX-3は、同年12月に最初の改良を受けており、今回は約1年ぶり2回目のモデルチェンジ。ちょっとくらい人気にあぐらをかいても…、と思ってしまいますが「導入できる技術、改良できる部分があるなら、タイミングを問わず、出し惜しみもしません」というユーザー第一の姿勢が、クルマ作りに熱く、ちょっと生真面目なマツダらしさといえるでしょう。
改良のために用意されたメニューは多岐にわたりますが、その概要をまとめると…
1.マツダが追求する“人馬一体”の走りをより上質なものに深化
2.“人間中心”の設計思想に基づき操作性や装備を進化
3.安心・安全とドライブの楽しさを両立させる先進安全技術の導入
といったところになるでしょうか。
では、実際の改良点について、各パートごとに紹介していきましょう。
1.の“人馬一体”の走りについては“G-ベクタリングコントロール(GVC)”の全車標準化がトピックといえるでしょう。この機構は、操縦安定性を向上させる技術で、走行中のステアリング操作に応じて駆動トルクを細かく変化させ、横方向と前後方向の加速度をコントロールします。
具体的には、4つのタイヤに掛かる接地荷重を状況に応じて最適化することで、クルマの挙動をスムーズにする、というもの。ドライバー、同乗者に掛かるGの変化がなめらかになるので、走行中の体の揺れが抑制されてクルマとの一体感が増しますし、快適性も向上します。
エンジン回りでは、ディーゼル車特有のノック音を低減する“ナチュラル・サウンド・スムーザー”が前回の改良で標準化されましたが、今回新たに、燃料噴射タイミングを緻密に制御することでノック音の発生そのものを制御する“ナチュラル・サウンド・周波数コントロール”を採用。ディーゼルらしい心地良いビート感は残しながら、不快な雑音は大幅に抑制しています。
また、足回りもダンパー特性のほか、ブッシュ類の特性や取り付け方法を見直すことで、操縦安定性と乗り心地の改善を図っています。路面の継ぎ目などで感じるガツンという振動のほか、うねりのある路面での不快な振動も低減しています。
続いて、2.の操作性や装備はというと、上位グレードのメーターナセル上に備わる“アクティブドライビングディスプレイ”がフルカラー化し、同時に高輝度化が図られたことなどにより、視認性が向上しています。
装備面では、新しいステアリングホイールの採用や、ドアロックに連動するドアミラーの格納・展開機能の標準化など、操作性や利便性にこだわった改良が施されました。
そして、3.の安全性については、装備、機能が大きくグレードアップしています。注目すべきは、機能が強化された“アダプティブ・LED・ヘッドライト”の採用により、夜間の視認性が向上。ハイビームでの走行を基本としつつ、対向車や先行車の有無や速度域に合わせて、照射範囲をきめ細かくコントロールするようになっています。
また、ブレーキの自動制御によって衝突被害を軽減する“アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ”、いわゆる、自動ブレーキも大幅な進化を遂げました。従来モデルでは、検知対象となるのは車両のみでしたが、新型では歩行者の検知も可能となり、併せて、作動速度域も約4km/h~30km/hから、車両では4km/h~80km/h、歩行者では10km/h~80km/hへと大きく拡大しています。
…といった辺りが、今回新たに採用された主なテクノロジーです。まさに、全方位にわたって出し惜しみナシの改良を施したということが、ここまででもお分かりいただけるのではないでしょうか。
では、実際に走るとどうなのか? 今回は限られた試乗時間、市街地&首都高速道路のみという条件下ではありますが、新旧モデルを乗り比べてみました。
動き出しで感じるのは、ステアリングフィールがしっとり重厚になったな、ということ。電動パワステのチューニングが変更されたこともありますが、従来モデルの18インチホイール装着車では、速度域を問わず軽めの操舵力で、路面の感触が伝わって来ないな、と感じることもありました。一方の新型は、GVCの効果と相まって、交差点の右左折から高速道路でのレーンチェンジまで、シチュエーションを問わず路面の状況が“じわっ”と手に伝わってきます。
また、静粛性や乗り心地も大きな進化を感じさせる部分で、ダッシュボードの向こう側から聞こえる「ルルル…」という音から、ディーゼルエンジンであることは分かります。しかし、不快な音質ではなく、むしろ躍動感を感じさせる心地良いサウンドに、しっかりと調律されているのです。さらに、従来モデルでは後席や荷室の辺りから聞こえてきた、舗装路面の変化に伴う「ザー」や「ゴー」という騒音、高速の継ぎ目などで発生する「ゴツン」という感触も、大幅に軽減されています。
従来モデルは、よくいえば全体的に軽快な印象ですが、新型は“コンパクトだけど上質”というキャラクターに見合った、品よく濃厚な乗り心地になったな、というのが正直な感想です。そう考えると、XD LパッケージのAT仕様をベースに、インテリアに高級レザーとスエード調人工皮革のコンビ素材を使ったシートや、ブラウン&グレー系のカラーコーディネートを施した特別仕様車XD Noble Brownは、CX-3のキャラクターを最も色濃く象徴するモデル、といえるかもしれません。
ちなみに、今回ドライブした新型のXD Lパッケージ(4WD/6AT)は標準モデルの最上位グレードで、価格は303万4000円。コンパクトクロスオーバーSUVとしてはなかなかのお値段ではありますが、装備面や乗り味など“CX-3ならではのプレミアム感”を存分に堪能するなら、やはり上級グレードがベターな選択肢かな、と思います。
<SPECIFICATIONS>
☆XD Lパッケージ(4WD/6AT)
ボディサイズ:L4725×W1765×H1550mm
車重:1340kg(1360kg/i-ELOOP装着車)
駆動方式:4WD
エンジン:1498cc 直列4気筒 DOHC ディーゼルターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:105馬力/4000回転
最大トルク:27.5kg-m/1600~2500回転
価格:303万4000円
(文&写真/村田尚之)
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