そして時が経ち、今やそのディスカバリーに弟分ができました。ただし、ディスカバリーがエンジンを縦置きにレイアウトするのに対して、ディスカバリースポーツはエンジン横置きにレイアウト。同じディスカバリーのネーミングを名乗りながら、骨格からして違う全くの別モノなのです。
むしろディスカバリースポーツが近いのは、ランドローバーの大ヒットモデルである「レンジローバー・イヴォーグ」。両車はともに、エンジンを横置きに搭載し、エンジン自体も同じ。強引にいえば“ディスカバリースポーツはレンジローバー・イヴォーグをストレッチして3列シート仕様にしたモデル”というわけです。
つまり、初代ディスカバリーがレンジローバーのシャシーを上手に借りたように、ディスカバリースポーツはレンジローバー・イヴォーグのシャシーを上手に借りているのです。
ひょっとしたら「レンジローバー・イヴォーグ・ロング」もしくは「ディスカバリー・イヴォーグ」といったネーミングにすれば、その立ち位置がもっとわかりやすかったかもしれませんね。余計なお世話かもしれませんが。
しかし、そんなネーミングやラインナップのネジレによるモヤモヤも、ひとたびステアリングを握れば、さして気にならなくなります。
2リッターの直列4気筒ターボエンジンは、240馬力とパワフル。9速ATが巧くギヤを選んで、2トン近くある重いボディをグイグイ引っ張ってくれます。スペック以上に力強い印象。オプションの3列目シートを付けて7人がフルに乗ったり、荷物を満載したりしても、ヒーヒーいいだすようなことはないでしょう。なにせ海外では、さらにキャンピングカーまで牽引することも珍しくありませんから。そういうシーンを前提に設計されているクルマなわけです。
力強さと同時に、街中では“重厚さ”を感じさせます。とりわけ、低速走行時。駐車場の枠に出し入れする時、細い路地の十字路を曲がる時、ステアリングを切りながらアクセルを踏むような場面になると、大きな質量を動かしている感触が往々にしてステアリングから伝わってきます。
良くいえば、高級なクルマをコントロールしている重々しさがあります。ただし、タウンライド中心のドライバーには、あまりスポーティに感じられないかもしれません。
ところが…
その印象が一変するのは、混雑した街を抜け出した後です。高速道路、そしてワインディングロードの両ステージ。まず高速道路では、ジャンクションでの合流。より速く流れている車線へのレーンチェンジが、とってもイージー。アクセルを踏んだ分だけ車速が素直に乗ってくれますし、ステアリングフィールの重々しさの中にも、正確さを汲みとることができます。気持ち良くまっすぐ走ってくれることもあり、ロングドライブではストレスフリー。グランツーリスモ的なキャラクターさえ感じさせてくれるのです。
次にワインディング。重いクルマの扱いに長けたランドローバーは、オプション装備ながらコーナリングでアンダーステアを抑える仕組み“トルク・ベクタリング・バイ・ブレーキング(TVdB)”を投入しています。その作動を確認するまでには至りませんでしたが(もしくは作動が自然で介入を意識させることがない?)、“スポーツ”を名乗るだけの運動性能を見せつけてくれます。
ペースを上げて元気よく走らせても、常にトレッドの間に重心が落ち着いている感じ。なに当たり前のことをいってるんだ?…と思われるかもしれませんが、中にはトレッドから重心が飛び出したようになり「オットット」と慌てさせられるモデルもあるのです。ディスカバリースポーツは、足をガチガチに固めているわけではないのでロールはします。しかし、だらしないロールではなく、旋回スピードに応じたもの。素直な動きなので同乗者も酔いにくいように思われます。
ランドローバーブランドのクルマをインプレする時、オフロード性能を省略してしまうと、せっかくのアドバンテージが消えてしまいそうで心配になりますが、ディスカバリースポーツはオンロードの走りだけでも、存分に存在価値を見せつけてくれました。
今という時代、こういうクルマを求めているドライバーが多いからこそ、レンジローバー・イヴォーグは大成功を収めているのでしょう。3列目のシートという新しい選択肢を武器に、ディスカバリースポーツも2匹目のドジョウになることは、確実のように思われます。
そしてプライスは、492万円からのスタート。あいわからずの切り込み隊長ぶりをここでも十分感じさせてくれました!
<SPECIFICATIONS>
☆HSE LUXURY
ボディサイズ:L4610×W1895×H1725mm
車重:1920kg
駆動方式:フルタイム4WD
エンジン:1998cc 直4ターボ
トランスミッション:9速AT
最高出力:240馬力/5500回転
最大トルク:34.7kg-m/1750回転
価格:692万円
(文&写真/ブンタ)
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