さて。森鴎外ですが、やっぱり「国語資料集」的なイメージ。
学生時代、おひげがダンディなあの写真に落書きした思い出のある大人も多いことでしょう。
何せお家柄抜群で、お医者さんとしても超エライ人。明治の教養人の教養っぷりたるや、本当にレベルが桁違いだなあ…と思わせてくれる超エリート文豪です。そして『舞姫』を読むに、きっとモテ男です。
エリートで格が高く、明晰でモテ男。そんな超人・森鴎外ですが、どこか艶のある魅惑の短編も残しています。
この『牛鍋』も、どこかしどけない雰囲気の短編小説。描写されるのは牛鍋を食べるシーン。ほぼそれだけです。
ちなみに冒頭は……
鍋はぐつぐつ煮える。
牛肉の紅は男のすばしこい箸で反される。白くなった方が上になる。
てな感じで始まります。どうです? 美味しそうでしょう。
短編の中では、男とその女、そして男の知り合いの娘である少女。3人が煮える牛鍋を前にしているシーンが描かれています。
セリフも極端に少なく、ひたすらに3人の様子が観察され、最後に鴎外はその様子を猿山の猿と比べ、最終的には
人は猿より進化している。
と言う。
牛鍋からの猿。面白いよ、鴎外!
まあ、何はともあれ「牛鍋」です。気軽に作ってみましょう。
■材料は牛肉・ネギ・割り下。これだけ!
小説『牛鍋』から読み取れる材料としては、まず牛肉、そしてグツグツ煮える汁、それとネギ。
斜に薄く切られた、ざくと云う名の葱は、白い処が段々に黄いろくなって、褐色の汁の中へ沈む。
上で引用した文章から見るに、
- 汁は褐色
- 肉は返しながら煮て食べる
- ネギは薄めに切る
のが分かりました。
しかし、牛鍋は時代や店によって様々なレシピのある料理。大雑把な私は日和りに日和って、2種類の割り下と、3種類の肉を用意しました。
■割り下は醤油味と味噌味
まずはいかにも東京らしい醤油を強くきかせた割り下。
私の場合は醤油:酒:みりんを等量で。そこに昆布を突っ込んで、砂糖と水で好みの味に調節する。そんな感じですが、市販のめんつゆや鍋つゆでも大丈夫です。
もうひとつは、東京の牛鍋や桜鍋の名店で見られる味付けを真似した、味噌味の割り下です。
今回はかつおだしに赤味噌、醤油、酒、みりん、砂糖を火にかけ、好みの味を作りました。