[再現!文学ごはん]森鴎外『牛鍋』の「牛鍋」はネギのザク必須!

さて肉です。

この『牛鍋』という小説は、これまた大雑把に言うなれば、男は酒を飲みながら肉を食いまくる。女は男に夢中で酒を汲んでやるばかり。

そして少女はお腹を減らして肉に箸をのばすのだけれど、男が

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待ちねえ。そりゃあまだ煮えていねえ。

とかなんとか言って、なかなか食べさせない……という、なんとも言えないところから始まります。

ええっ!男、オトナ気なくない!?

……とは思うんですが、まあそれは置いておいて、この肉は「煮えてない」と食べられない。

そして

丈夫な白い歯で旨そうに噬んだ。

もうどの肉も好く煮えているのである。
少し煮え過ぎている位である。

なんてあたりを読むに、そこそこ厚みがあるけれど、煮すぎても美味しくない。そんな肉のようです。

肉は3種類用意しました。

まずは、国内産の脂が乗った「焼肉用切り落とし」。味の濃い割り下で煮るので、すき焼き用よりは厚めのお肉です。

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次はオーストラリア産のステーキ用肩ロース。安くてたんぱく質たっぷり、庶民の味方! これは角切りに。

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そして「いや、もしかしたら当時の牛肉はもっともっと硬かったかも!」ということで、ローストビーフ等に使う超絶赤身の「モモ肉かたまり」。これも角切り。

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■ひっくり返しながら食べる!ネギも食べる!

食べ方は、鍋に浅くひいた割り下の中にお肉を並べて、ひっくり返しながら煮ていく模様。

早速2種類の割り下、3種類のお肉を食べてみました。

浅めの鍋に2〜3センチの高さまで割り下をはり、沸騰してきたら肉やネギを並べます。

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美味しい!

もちろん、焼肉用の脂たっぷり肉はイケてます。煮ても硬くならず、脂と甘みのある割り下がよく合います。どちらかと言えば、お醤油味に向いています。

そしてステーキ用肩ロースと、モモ肉も意外にいい!

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赤身肉を角切りにした場合は、鍋を煮たたせず、沸騰寸前の温度でじっくりまわりを固めたミディアムレアで食べると、でき立て牛タタキのような感じで美味しく食べられます。

少しアゴは疲れますが「肉食べてる!」という満足感がたまりません。

ネギもあまりベタベタに煮ないうちに口に運ぶと、シャキっとした食感と少々の辛みが、とっても爽やか!特に甘めの味噌味にはネギ必須でした。

割り下はどちらも美味しかったですが、お酒呑みには醤油ベース、ご飯を食べるなら味噌ベースがおすすめです。

 

■意外に使えそうな「牛鍋」

牛鍋と言えば歴史のある料理、ちょっと手がかかりそうかな? と思っていたのですが、実際作ってみたら「すんごく楽!」と感じました。

鍋は小さくていいし、肉も高級じゃなくていい。あとは割り下とネギだけですから、相当気軽&リーズナブルです。

また今回のように肉を何種類か用意すると、すき焼きと焼肉の間くらいの感じで楽しい!

作中では牛鍋のお供に日本酒を飲んでいる様子が描かれていたので、飲んでみると、これがまた合います。寒い日に座敷で牛鍋と熱燗。ちなみにハイボールも合います。

さて、最後に小説ですが、男は少女に肉を分けてやったのか。

なんで森鴎外は

人は猿より進化している。

と言ったのか。

そして果たして本当にそう思っているのか。ぜひ小説を読んでみてください。

筆者の個人的な感想としては、動物ドキュメンタリーのようでもあり、不条理劇の一幕、あるいはSFのショートショートのような不思議な読後感もある面白い小説だと思います。

>> 森鴎外『森鴎外全集 2 普請中・青年 ─普請中/青年』(筑摩書房)

 


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連載[再現!文学ごはん]


(文・写真/くぼきひろこ

C

くぼきひろこ/ライター

美食・カルチャー・ライフスタイル・クルマ・ゴルフ・巷の美女etc……対象は様々に、雑誌・ウェブサイト等の各種媒体にて活動中のフリーライター。「人の仕事のすべて。そして、その仕事から生み出されるすべてのモノゴトが面白い!」と津々浦々の興味津々で取材・執筆を行う。

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