かつてはクロカン、オフローダーなどと呼ばれ、少々特殊なカテゴリーであった車種が、SUVと総称されるようになり、いつのまにか街の風景に溶け込むようになりました。
ひと昔前(ふた昔前!?)なら、「三菱『パジェロ』に乗っています」というフレーズが、オーナーの人となりをある程度表していました。つまり、ワイルドでアウトドア好きな、少なくとも、そう見られたい人物だと暗示していましたが、今、例えば「愛車はトヨタの『ハリアー』です」といっても、「なるほど“ライオン丸”が好きなんですね!(古っ!)」と食いついてくる人はまれでしょう(←スイマセン、ちょっと話がズレました)。
SUVというジャンルが、良くも悪くも特殊性を失うにつれ、当たり前ながら、クルマそのもので個性を発揮する必要性が高まりました。その流れを決定的にしたのが、2010年にデビューしたレンジローバー イヴォークです。2年前のデトロイトモーターショーで展示されたコンセプトカーが、そのまま路上に躍り出たかのような、ハンサムなSUV。泥臭さとは無縁の、SUV界の3ドア/5ドアクーペであり、デートに使えるスペシャルティカーです。
頑強だけど重たいセパレートシャーシや、マッチョな大排気量エンジンを捨て、(相対的に)軽量なモノコックボディと環境に優しい2リッターターボを得て、文字どおり颯爽と現れました。うーん、カッコいい! 日本での販売が開始されて早くも5年が経とうとしていますが、特に3ドアのイヴォーク クーペの新鮮さは全く失われていません。路上でその姿を目にすると、なんだか得した気分になるのはワタシだけでしょうか。
さて、イヴォーク族の末弟として加わったイヴォーク コンバーチブルは、Z字状に折り畳まれる幌を収納するため、ボディ後半に手直しを受けました。防音仕様のしっかりとした幌は、トンネルコンソールのスイッチを操作することで、18秒でオープン、21秒で閉じることができます。48km/hまでなら、走行中でも可動します。
オックスフォードレザーなど、高級素材をふんだんに用いた室内は、インパネまわりを含め、イヴォーク一族の一員として見慣れたもの。もちろん、スターターを押すと同時にせり上がってくる、ダイヤル式のシフターも装備しています。
乗車定員は、フィクストヘッドモデルより1名少ない4名となります。特筆すべきは、幌の開閉に影響されない、かつキャビンと完全に分かたれたトランクルームが用意されること。ある意味、ハッチバック式のクローズドモデルより、ラグジュアリーといえるかもしれません。
イヴォーク コンバーチブルは、HSE DYNAMCのみのワングレード設定で、価格は765万円。イヴォークの4ドアモデルが502万〜832万円。やはりHSE DYNAMICのみのクーペが717万5000円ですから、コンバーチブルはかなり上位設定です。
エンジンは、オールアルミの2リッター直4ターボ(240馬力/34.7kg-m)を搭載。3.5リッター級のアウトプットで、イヴォークのオープンボディを引っ張ります。組み合わされるトランスミッションは、贅沢な9速AT。優男ご用達の晴れやかなクルマとして、スムーズに、十分な動力性能を発揮します。
足もとは、20インチのタイヤ&ホイールが標準(!)で、路面によっては、ちょっとナマな突き上げも感じますが、そこは スポーティなドライブフィール中のスパイスといったところでしょう。
ただし、ボンネットをアルミ化、フロントフェンダーに軽量の複合素材を用いているとは上、車重は2020kgと、クローズドモデルより300kg近く増えています。2トン超のウエイトは、スポーツ走行中には頭の隅に置いておいた方がいいかもしれません。
天地が少し苦しいラゲッジルームの容量は251リッター。絶対的に広大、とはいえませんが、スキーなどの長尺モノを通す穴も設けられていますし、ふたりの小旅行のための荷物なら、十分に収納可能。手荷物はリアシートに置いておけます。
リアシートは、立派な革張りのもの。季候がいい時分にはオープンにして、仲のいい友人を後ろにも乗せてワイワイ走るのは楽しいことでしょう。とはいえ、このクルマの後席は、あくまでプラス2と捉えるべき。オープンボディのイヴォークは、基本、カップルのためのクルマです。姿カタチはSUVなれど、イヴォーク コンバーチブルは身も心もスペシャルティカー。SUVの細分化は、ココまで来たのです。
<SPECIFICATIONS>
☆レンジローバー イヴォーク コンバーチブル HSE DYNAMC
ボディサイズ:L4385×W1900×H1650mm
車重:2020kg
駆動方式:4WD
エンジン:1998cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:9AT
最高出力:240馬力/5500回転
最大トルク:34.7kg-m/1750回転
価格:765万円
(文&写真/ダン・アオキ)
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