【VWティグアン試乗】全方位スキなしの完成度。“つながる”機能もより実用的に

対面して真っ先に感じたのは、水平基調のエクステリアデザインが見せる凛とした佇まいと、従来モデルをしのぐ高級感、でしょうか。

フロントグリルの横バーはヘッドライドへとつながるようにサイドへと流れ、ワイドさを強調。ボディサイドのプレスラインもエッジが効いていて、全長4500mm、全幅1860mmというボディに、伸びやかさと力強さを与えています。

フォルクスワーゲン ティグアン

ディテールの処理は、先にデビューした現行の「ゴルフ」や「パサート」の流れを汲んでおり、全体的に大人びた印象。Rラインにはブラックのモールが凛々しい専用バンパーや、ボディ同色のサイドシルカバーが備わりますが、これも程良くスポーティさを主張します。

コンパクトSUVというと、カジュアルさや若々しさを意識したモデルが少なくありませんが、都会的で落ち着いた雰囲気を望むユーザーには好意的に迎えられるのでは、と思います。

インテリアもまた、洗練された外装にふさわしいデザイン&コーディネートで、なかなか上質な空間に仕立てられています。Rラインには専用のロゴ入りシートが備わりますが、その形状や素材も奇をてらわず、品よくシックな仕立てとなっています。高めのヒップポイントもあいまって前方視界は良好。乗り降りも楽ですし、しっとり重厚な掛け心地もVWらしい美点といえるでしょう。

フォルクスワーゲン ティグアン

シートのアレンジやインテリアのメカニズムもなかなか考えられており、後席はスライド&リクライニング機構付き。助手席シートバックも前に倒してフラットに折り畳み可能。レジャー用品など、かさ張る荷物や長尺物でも、楽に積み込めます。

フォルクスワーゲン ティグアン

さらに、フロントシートの背後には、カップホルダー付きのテーブル、ルーフにはチルトダウンする小物入れまで備わるなど、まさに至れり尽くせり。

フォルクスワーゲン ティグアン

フォルクスワーゲン ティグアン

ラゲッジスペースも先代比で145リットル増の615~1655リットルと、スクエアなボディ形状を生かし、十分な容量を確保しています。また、オプションではありますが、リアバンパー下に足をかざすことで開閉可能なパワーテールゲートも用意されるなど、充実した装備類と使い勝手の良さは日本車もかくや…、という出来栄えです。

フォルクスワーゲン ティグアン

フォルクスワーゲン ティグアン

また、ハイラインとRラインにはアナログ式メーターに代わって、中央部にナビ画面のほか、ドライバーアシスタンス機能も表示できる12.3インチのデジタルカラーディスプレイが備わります。こうした先進装備がもれなく“全部盛り”となっている点も、カジュアル系SUVとは一線を画すティグアンならではの魅力といえるでしょう。

フォルクスワーゲン ティグアン

では、走ってはどうなのか? といえば、こちらもスキなし、という完成度。

フォルクスワーゲン ティグアン

搭載されるのはターボ付きの1.4リッターTSIエンジンで、低負荷時には2気筒を休止させる“ACT(アクティブシリンダーマネジメント)機能”が備わります。最高出力は150馬力、最大トルクは25.5kg-mというスペック、1540kgという車重を考えると、いささか物足りないのでは? と思われるかもしれません。しかし、街中で使用する1500~3500回転のトルクは従来モデルよりアップしており、信号からのスタートで流れをリードすることも可能です。

フォルクスワーゲン ティグアン

スピーティで滑らかな変速を行う6速DSGトランスミッションに加え、上位グレードではシーンに合わせてシフトプログラムやダンパーの減衰力などの切り換えを可能とした“ドライビングプロファイル機能”も採用されており、多くの方が走行性能で不満を感じることはないのでは、と思います。

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と、限られた時間での市街地、高速道路走行でもなかなかの好印象ですが、ティグアンの注目すべき点はこうした基本性能の高さだけではないのです。

まずひとつ目のハイライトは、スマートフォンとの連携を実現した“フォルクスワーゲン Car-Net”が標準装備となり“つながるクルマ”の性能が格段にアップしたことでしょう。すでにゴルフなどへの搭載もスタートしたシステムなので、ご存知の方もいるのではないでしょうか。これは、ハイライン以上に標準装備となる純正インフォテイメントシステム“Discover Pro”、コンフォートラインに備わる“Composition Media”を通じて利用できる、モバイルオンラインサービスのこと。

全グレードに対応した“APP-Connect”機能では、USB接続により車両側のタッチスクリーンでスマホアプリの表示や操作が可能になります。つまり、地図アプリのナビ機能や検索機能、また音楽アプリなどもナビ画面経由で利用できます。

さらに、ハイライン以上に備わる“Discover Pro”では、インターネット接続によりナビゲーションの検索性能や案内精度を高める“Guide&Inform”機能を装備しています。これにより、専用サーバーに接続することで、VICS交通情報に基づく高精度なルート案内に加え、Googleのデータベースによるオンライン検索も可能となりました。また、Google EarthやGoogle Street Viewにより、目的地周辺の状況確認、駐車場の空き状況、ガソリンスタンドの場所や料金情報もリアルタイムで入手することができるのです。

フォルクスワーゲン ティグアン

どのように活用するかはオーナー次第ではありますが、インフォテイメントシステムは使用してこそその利便性を理解できるもの。特に、ティグアンはレジャーで使うというユーザーも少なくないでしょうから、標準化によるメリットは大きいのではないかと思います。

そして、もうひとつはVWの総合安全コンセプト“Volkswagenオールイン・セーフティ”に基づいて、最新の安全装備を数多く採用していることです。

予防安全では、レーダーセンサーにより先行車との距離を自動測定、自動的に速度や車間距離を維持するアダプティブクルーズコントロール“ACC”、カメラとレーダーによる歩行者検知対応エマージェンシーブレーキ“Front Assist”が全グレードに標準装備。ハイライン以上では、レーンキープアシストシステムや渋滞時追従支援システムも標準となっており、半自動運転を実現しています。

さらに、VWの安全思想は二次被害防止にも及んでいます。歩行者が車両前部に衝突した場合に、ボンネット後端を約50mm持ち上げて衝突エネルギーを吸収する“アクティブボンネット”、衝突の衝撃をセンサーが検知すると自動的にブレーキをかけ、車両を減速させることで対向車線へのはみ出しなどによる多重事故の危険性を低減させる“ポストコリジョンブレーキシステム”も全車標準となっています。

コンパクトSUVとしては間違いなくクラスをリードする存在となったティグアンですが、気になるのはそのお値段。現在のラインナップであるTSIコンフォートラインは360万円、TSIハイラインが433万2000円、TSI Rラインが463万2000円と、先代モデルとほぼ変わらない設定となっています。ライバルたちをリードする装備の内容を知れば、十分に“お買い得”と思わせる設定ではないでしょうか。バリエーションの拡充にも積極的な近年のVWですから、さらなる魅力的なグレードの展開にも期待したいと思います。

フォルクスワーゲン ティグアン

<SPECIFICATIONS>
☆TSI Rライン
ボディサイズ:L4500×W1860×H1675mm
車両重量:1540kg
駆動方式:FF
エンジン:1394cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6速AT(ツインクラッチタイプ)
最高出力:150馬力/5000~6000回転
最大トルク:25.5kg-m/1500~3500回転
価格:463万2000円

(文&写真/村田尚之)


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