運転免許を取得してすでに30年以上経つ僕でも、雪道でオープンカーを本格的に走らせるのは、正直、初めての経験。事前には「寒くてツライんじゃないの?」という周囲からも声もあったけれど、実際に乗ってみたら、これが思っていた以上に爽快だった。
試乗時の気温はマイナス4℃。とはいえ、日差しが差し込んでいれば思いのほか寒く感じない。ちなみに、神奈川・箱根の山頂などでも、この時期は同じくらいまで冷え込む日が結構ある。だから当日、イヴォーク コンバーチブルのルーフを開け放って走るのも、あまり苦に感じなかった。
そう感じさせてくれたのは、イヴォーク コンバーチブルのエアコンとシートヒーターが強力だったから、というのも大きな要因。おまけに試乗車には、ステアリングヒーターも装備されており、アタマこそひんやりしていたけれど、足下、腰、背中、そして手のひらは、とても暖かく快適だったのだ。
これだけの好条件(?)がそろえば、雪道でのオープンドライブは大いにアリ! まるでスキーを滑っている時のように、スポーツを楽しむような感覚を味わえた。「オープンカーは夏の乗り物」という声をよく耳にするが、実はオープンカーは“夏以外”がいい。夏は暑くてかえって苦痛。中でも、ひんやりとした冷気を肌に感じながら走れる冬は、特に気持ち良くドライブできる。
ところで、今季の長野は雪が多く、試乗前日も大雪が降り積もったそうだ。しかし、僕が試乗したタイミングでは雪はちらつく程度。路面はしっかり圧雪されていて、ルーフを開け放ったイヴォーク コンバーチブルを嬉々として走らせられた。雪上でのドライブを大いに楽しめた理由としては、屋根が開くことはもちろんだが、イヴォークが実に頼りがいのある四駆メカを搭載しているから、というのも大きい。
イヴォークはデビュー当初、現在とは異なる4WDシステムを採用しており、お世辞にも4駆性能は素晴らしいとはいえなかった。厳しいいい方をすると、オンロードでもオフロードでも、4駆の性能は“ランドローバー・クオリティ”ではなかった。これは、イヴォークのようなFF車ベースの4WD車を作るのが、ランドローバー社にとっては初の試みだったのが要因だとみている。
しかし、最新のシステムでは、走り出しの時点から後輪へ多くの駆動力を掛けるセッティングへと変更。さらに“トルクベクタリング機構”の採用により、左右の後輪に伝える駆動力の配分を、上手にコントロールしている。
この結果、過度のアンダーステア&オーバーステアが生じることなく、走行中の安定感が以前よりも大幅アップ。さらに、発進時にアクセルをグッと踏み込んだ瞬間のトラクションの掛かり方が良くなり、カーブでアクセルを踏んでいった際のアンダーステアも減少。今回も、まさに“オンザレール感覚”でドライブできた。
また今回、イヴォーク コンバーチブルで雪道や凸凹路を走ってみて、改めて高く評価したいと感じたのは、クルマにとって“キホンのキ”であるボディが、とてもしっかりしている点。
例えば「ジープ」のようなラダーフレームを採用する車種では、フレームの上に載せるボディは、大げさにいってしまえばなんでもいい。オープンカーのような形状でも、走りに与える影響は小さいからだ。けれど、モノコックボディを採用したクルマの屋根をカットする場合、当然のことながら、ボディ剛性は大幅に落ちてしまう。そのままでは、まともに走らせることさえ難しい。
その点、イヴォーク コンバーチブルは、屋根のカットで生じたボディ剛性の低下を補うために、徹底したボディ補強を行っている(その分、クローズドモデルより300kg近く重くなってはいるが…)。その恩恵として「デザイン重視のために屋根を切ったのだから、走りは我慢して」といういい訳が、走りの性能やフィーリングからは一切感じられないのだ。
もちろん、クローズドモデルに比べるとラゲッジスペースは狭いし、荷室へアプローチするための開口部も狭い。しかし、オープン化によって生じたそんな不満点は、SUV×オープンボディという希少性や、オープンドライブ時の気持ち良さ、そして、なんといってもイヴォーク コンバーチブルにしかない独特のカッコ良さで、十分埋め合わせができている。雪道で屋根を開けてドライブする、という非日常の体験を通じて、改めてイヴォーク コンバーチブルの魅力に心惹きつけられた。
<SPECIFICATIONS>
☆レンジローバー イヴォーク コンバーチブル HSE DYNAMC
ボディサイズ:L4385×W1900×H1650mm
車重:2020kg
駆動方式:4WD
エンジン:1998cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:9AT
最高出力:240馬力/5500回転
最大トルク:34.7kg-m/1750回転
価格:765万円
(文/岡崎五朗 写真/&GP編集部)
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