【日産 フェアレディZ試乗】スポーツカーの真髄ここにあり!古典的だが走る愉しさ満点

フェアレディZは、1969年に初代S30型がデビューを飾った、日本で最も長い歴史を有するスポーツカー。4世代目のZ32型が2000年に販売終了となり、5世代目のZ33型がデビューするまでの間、1年半ほどの空白期間がありましたが、見事に復活を果たしました。

そして、現行型となる6世代目Z34型へのフルモデルチェンジが行われたのは2008年末のことですから、すでに8年以上の年月が経過しています。そろそろ次期型の声も聞こえてきますし、モデル末期に差し掛かっているのも事実でしょう。

日本ではスポーツカー受難の時代といわれて久しい昨今ですが、国産車のラインナップを眺めてみれば、マツダ「ロードスター」、トヨタ「86」、スバル「BRZ」、ホンダ「NSX」に「S660」などなど、Z34のデビュー以降、多くのモデルが登場しています。そういえば、レクサス「LFA」という超弩級のモデルもありましたし、Z34に先んじて発売された日産「GT-R」は、世界的なスーパーカーとして現在も一線級のパフォーマンスを誇ります。

もちろん、これら最新のスポーツカーはクルマとして全くスキのない完成度を誇りますし、パワーの大小こそあれ、乗れば素晴らしい動力性能や運動性能を味わうことができます。街中でもワインディングロードでも、高速道路だって「ん! 運転が上手くなったんじゃないか?」っていう具合に。

一方、フェアレディZ ニスモの第一印象は、あまりよろしくなかった、というのが本音です。

Z ニスモは、2014年のマイナーチェンジにより、他のニスモシリーズにも採用されているデザインアイデンティティ、つまり、バンパーやサイドスカートに配される赤いアクセント、LEDハイパーデイライトなどが追加されたほか、エアロパーツやホイールデザインの変更を受けています。

日産 フェアレディZ ニスモ

日産 フェアレディZ ニスモ

また、シートも専用チューンが施された、シェイプの深いレカロ社製のスポーツタイプが標準となりました。このタイトなシートに収まり、人工スエードの“アルカンターラ”が配されたステアリングを握った瞬間、ちょっとマズいことになったな、と思うと同時に、胸の高鳴りを強く感じました。

日産 フェアレディZ ニスモ

エンジンを始動すべく、クラッチペダルに足を載せると、カッチリと明らかな踏み応え。意を決してスタートボタンと押すと、専用チューンが施され、355馬力を発生する3969ccV型6気筒自然吸気“VQ37VHR”エンジンが「ボンッ!」という低い爆音を伴って目を覚まします。日産のV型エンジンであるVQシリーズは長い歴史があり、サルーンやSUVにも搭載されていますが、この時、VQ37の二面性といいますか、内にもうひとつのキャラクターを秘めていることに気づきました。

日産 フェアレディZ ニスモ

そして、ストロークが短く、ズシッとした手応えを感じるシフトレバーを1速へ。これまた相応の重さを持つステアリングを切りつつ、パーキングから動き出します。まだ水温が低く、2000回転程度ではなんとも眠い反応を見せるVQ37を温めつつ、市街地を移動して高速道路へと上がります。

右足にちょっとだけ力を込め、3速、4速、5速…とシフトアップ。低回転域では金属的でメカニカルな音を奏でるVQ37ですが、大排気量の自然吸気エンジンらしく、淀みなく、必要なパワーが右足の動きひとつで手に入ります。さらに、シフトダウンから強めにアクセルを踏み込んだ時の咆哮、スピードの伸びは、まさに快感といえるでしょう。

日産 フェアレディZ ニスモ

Z34型フェアレディZの6速マニュアルギヤボックスには、シフトダウン時にアクセル操作を行わなくても、最適なエンジン回転数に合わせてくれる“シンクロレブコントロール”機能が備わります。クルマが勝手に“ヒール&トゥ”のヒール、すなわち、アクセル操作を行ってくれるので、ドライバーはブレーキとクラッチ操作に専念すればいい、というワケです。

日産 フェアレディZ ニスモ

実は当初、シンクロレブコントロールには懐疑的でしたが、ギクシャクするどころか絶妙な回転数にアジャストしてくれる様子を体験すると「あぁ、プロドライバーはこういうタイミングと回転数で変速するんだろうな…」と納得。何しろ、日産のテストドライバー氏いわく「この変速は私よりも上手い。私の30年を返せ!」と涙したくらいのシステムなのだそうです。

日産 フェアレディZ ニスモ

とはいえ、ドライバーをサポートしてくれる目新しいメカニズムは、このシンクロレブコントロールくらい。ブレーキ圧やエンジン出力を制御して車両の姿勢が不安定になるのを防ぐ“VDC”や、電子制御で制動力の配分を調整する“EBD”など、一般的な電子デバイスこそ備わりますが、クルマそのものは、ストイックな大パワーFRスポーツカー、という仕立てになっています。

特にZ ニスモには、フロント245/40R19、リア285/35R19というタイヤが装着され、専用のサスペンションも備わります。市街地や高速道路を流していても、わだちではステアリングにズッシリとその感触を伝えてきますし、足まわりもかなり硬めの設定です。

日産 フェアレディZ ニスモ

とはいえ、十分な剛性が確保されたボディ、車体の振動や不快なノイズを抑える“パフォーマンスダンパー”の効果もあり、硬派な仕立てであることは間違いないものの、乗り心地は悪くありません。むしろ、コーナリング時や車線変更時など、ドライバーの意思をダイレクト、かつスムーズに反映してくれる動きは、重量級スポーツカーながら清々しくもあります。

惜しむらくは、私にこのZ ニスモを御するほどのウデがないことですが、それでも、ステアリングやシフト操作などドライビングに関わるすべての動作において、息がピタリとあった時の快感は、ほかではなかなか得がたいと思わせるものでした。

日産 フェアレディZ ニスモ

■バージョンSTはスポーツカーとGTのいいとこ取り

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