【試乗】ファン垂涎のスバルBRZ tS。その走りはスポーツカーのお手本

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マニアックな人が多いスバルファンの中でも、さらに厳選された愛好家たちが購入すると噂されるSTIバージョン。同仕様には、エンジンにまで手を加え、わかりやすく(!?)性能を向上させた「Sシリーズ」と、今回の「tSシリーズ」とがありますが、turned by STIの頭文字からその名を取った後者は、ズバリ、運転の「気持イイ!」を目指したモデルです。

STIの考える「気持ちイイ!」とは“シンクロナイズド・ドライビング”。つまり、クルマがドライバーの思うとおりに動いてくれることが、クルマ作りのコンセプトなのだとか。

STIがBRZのtS仕様を手掛けるのは、2013年にリリースされたモデルに続き、今回で2度目。前後サスペンションにビルシュタイン製ダンパーと硬めのスプリングを組み合わせ、ブレーキキャリパーにブレンボ製の対向ピストン(前:4ポット、後:2ポット)を奢るという流儀は、前作同様です。ただしブレーキローターは、より冷却しやすいよう“ドリルド”こと穴あきタイプにグレードアップされています。

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クルマのチューニングで足回りのセッティングを追い込んでいくと、その土台となるボディにも手を入れたくなるもの。“フレキシブルドロースティフナーフロント”という長い名前の補強バーに加え、新tSが新たに組み込んだのが“フレキシブルVバー”。フレキシブルドロー〜はその名のとおり、車体前部のフロア側に装着されますが、フレキシブルVバーはエンジンルームの中に固定されるパーツ。この両者で、ハンドリングフィールに重要な影響を与えるボディ前部を、上下から抑えるという仕組みです。

エンジンルーム内の補強用バー、なんて聞くと、かつて峠でブイブイいわせていたクルマ好きの人たちは、左右のダンパー取り付け部をつなぐ“タワーバー”なんてパーツを思い出すかも。フレキシブルVバーも、基本的にはその仲間。でも、左右に分かれ、それぞれがバルクヘッド(=キャビンとの隔壁)に渡されて補強効果を高めるだけでなく、実はもうひとつ、なんともマニアックな効果を持っているんです。

なんとフレキシブルVバーには、ピロボールが組み込まれています。ボディ剛性を無闇に上げるのではなく、ハンドリングに直接影響するタイヤからの入力情報だけを選別してボディへと伝える、ために。結果として、ステアリングを切った時の車体のレスポンスがアップ! 例えるなら「雑味がなくなり、爽やかなハンドリングになった」といった感じでしょうか。

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なので、BRZ tSの特製レカロシートに座って走り始めると、タイヤのひと転がり目から“良いモノ感”がビンビン伝わってきます。ステアリングは正確。シフトレバーの動きは精緻。足回りは適度に締まっていて、路面の凹凸をガッシリしたボディが軽く跳ね返してくれます。

街中でのドライブなので、エンジンの回転数はせいぜい2500回転、速度は60km/h程度。なのにBRZ tSは、十分にスポーティ。ステアリングを切ると、あたかもクルマ側が予想していたかのように、スッと向きを変えてくれるんです。過敏なレスポンス、いわゆる「ゲインが高い」なんて印象は皆無。穏やかだけど、ドライバーの意図に沿って動いてくれる感じです。

だから、普通に走っているだけなのにスンゴク楽しい〜! カーブでステアリングを切るのが、ちょっとうれしくなるほどに。スポーティとは決して、峠道をトバしてナンボ、じゃないんだよ。BRZ tSは、そんな当たり前のことを再認識させてくれます。

ちなみに、新開発のフレキシブルVバーは、それを装着することで万一の際に不利に働くことがないよう、キチンと衝突実験を行った上で装着されています。一方、STIのロゴが入ったレカロシートは、バケットタイプながらサイドエアバッグ付き。そんな細部にまで気を配った作り込みもまた、STIモデルの魅力なんですね。

<SPECIFICATIONS>
☆tS 6MT
ボディサイズ:L4260×W1775×H1060mm
車重:1240kg
駆動方式:FR
エンジン:1998cc 水平対向4気筒
トランスミッション:6MT
最高出力:200馬力/7000回転
最大トルク:20.9kg-m/6400〜6600回転
価格:399万円

(文&写真/ダン・アオキ)

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