【ボルボ S90試乗】走りの印象が一新!パワフル&スポーティな新型にとまどう

ボルボS90は、その名のとおり、先行してローンチされたSUV「XC90」に続く90シリーズの一員。セダンのほか、ステーションワゴンの「V90」、V90の車高を上げてオフロードテイストをまぶした「V90クロスカントリー」がファミリーを形成します。

かつてフラッグシップといえば、3ボックスセダンが当たり前でしたが、SUVから発売される辺り、これも、自動車メーカーの稼ぎ頭がSUVになって久しい、今という“時代”なのでしょうか。かつてはキワモノ(!?)に近かったクロカン4駆がSUVへと名前を変え、今やすっかりメインストリームとなったのですね。

さて、雷神トールが持つハンマーをモチーフにした、LEDヘッドランプを装備するS90。日本市場では、3種類のグレードがラインナップされます。

2リッター直4ターボ(254馬力/35.7kg-m)の「S90 T5 モメンタム」(644万円)。同ターボエンジンに、さらにスーパーチャージャーを加えたハイパフォーマンス版の「S90 T6 AWD Rデザイン」(320馬力/40.8kg-m/749万円)、そして、Rデザインと同じパワーユニットを用いながら、よりラグジュアリーに振った「S90 T6 AWD インスクリプション」(842万円)という陣容です。トランスミッションはいずれも8AT。駆動方式は、T5がFF(前輪駆動)で、T6は4WDとなります。

ちなみに、ワゴンボディの「V90」には、これらのエンジンに加え、ターボ+スーパーチャージャーに、さらに電気モーター(87馬力/24.5kg-m)をプラスしたハイブリッドモデル「V90 T8 ツインエンジン AWD インスクリプション」(899万円)も用意されます(2017年9月頃デリバリー開始予定)。ステーションワゴンにかけるボルボ・カー・ジャパンの期待が垣間見えますね。

今回試乗したS90 T6 AWD インスクリプションは、セダン版の最上級グレード。いかにも北欧のモデルらしいクールなデザインをまとう外観に負けず劣らず、内装もアイボリーの革シートに、薄いブラウンのウッドパネルがよく調和しています。なるほど、車内全体がシャレた北欧家具のようです。

キラキラと輝く“ドライブモード”スイッチの前に設けられたレバーをひねり、エンジンスタート。

メーターナセル内は12.3インチの液晶パネルになっていて、各種メーターを表示します。センターコンソールには、縦型の9インチタッチパネルが収まり、先進性をアピールします。

オーディオは、イギリスの高級スピーカーブランドである“Bowers & Wilkins(バウアーズ&ウィルキンス)”のシステムを標準装備。総出力1400Wの12チャンネルデジタルアンプを備え、車内各所に、サブウーハーを含む大小19個のスピーカーが配されます。

ボルボといえば、かつては四角くて、ぼくとつで、生真面目だけが取り柄だった感があったのに、すっかりあか抜けてしまって…とお嘆きのオールドファンの方、ご安心ください。同社のウリである安全面は、しっかり進歩しています。

“歩行者・サイクリスト検知機能(夜間含む)”や“衝突回避・軽減フルオートブレーキシステム”といった安全システム、そして、XC90で初採用された“右折時対向車検知機能”はもちろん、さらにS90では“大型動物検知機能(夜間含む)”が追加され、大型の野生動物との衝突を回避・軽減することができるようになりました。人のみならず、動物にも優しいドライバーでありたい。そう考えている人には、見逃せない新機能です。

そしてもうひとつ、安全面の世界初機構があります。それが“ランオフロード・ミティゲーション”。車載カメラが車線境界線や側線を検知し、「クルマが土手から転げ落ちそう…」と判断すると、ステアリングを自動で操作し、自車を道路上に戻してくれます。場合によっては、ブレーキを踏むことも。これなら、ついうっかり居眠りしてしまった時などに頼りになるな…いや、頼りにしてはいけない機能です!

…と、ココまで読んで「自動運転は?」と気づいた方は鋭い! S90は“パイロット・アシスト”を標準で装備します。フロントウインドウに設置されたミリ派レーダーとカメラが車線を検知し、前走車との距離を保ちつつ、自車が車線の中央部を走るようサポートしてくれるんです。

ボルボは、2020年までに新しいボルボ車搭乗中の死亡・重傷事故をゼロにする、というビジョン(Volvo Cars' Safety Vision 2020)を掲げています。果たして“自動運転するクルマが究極の安全モデル”となるのかどうか? 興味あるところです。

冒頭でも述べましたが、新型S90は、先代のS90や、さらに遡って「960」シリーズから、そのキャラクターを想像すると、大きく外されます。のんびり、ゆったり走るかと思いきや、パワフルなエンジン、硬めのサスペンションで、意表を突くスポーティさをアピール。こうした変化も、今という“時代”なのでしょうね。

<SPECIFICATIONS>
☆T6 AWD インスクリプション
ボディサイズ:L4965×W1890×H1445mm
車重:1820kg
駆動方式:4WD
エンジン:1968cc 直列4気筒 DOHC 直噴ターボ+スーパーチャージャー
トランスミッション:8AT
最高出力:320馬力/5700回転
最大トルク:40.8kg-m/2200〜5400回転
価格:842万円

(文&写真/ダン・アオキ)

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