今回リリースされたLCは、もちろん、2012年のデトロイトモーターショーで披露されたデザインスタディ「LF-LC」の市販化モデルですが、LCの写真を見たり実車に接したりしていると「コレはレクサスのスーパースポーツ『LFA』の“民生版”ではないか!?」と感じる人も多いのではないでしょうか? 私もそう思いました。
実際、LCの大きなボンネットを開けると、サスペンションタワーに尋常ならざるゴツいアルミダイキャスト製の部品が使われていて、その上、左右をつなぐタワーバー…ではなく、エンジンを囲むように前後左右、6本の補強用ブレース(バー)が配され、サスペンション基部の剛性アップを万全のものとしています。新型クーペの“走り”にかける、エンジニアの方々の執念が立ち上ってくるかのような、気合いの入ったエンジンルームです。
そんなLCは「お客さまのライフスタイルを豊かにするパートナー」として開発されたレクサスのフラッグシップクーペ。新世代のレクサスモデルとして、イの一番に最新のFRプラットフォーム“GA-L”が与えられました。また、トヨタ…否! レクサス自慢のハイブリッドシステムも、根本から刷新されています。最新技術をどん欲に搭載するところは、LCの源流たる「ソアラ」を思い出させますね。ニッポンのスペシャルティも、すいぶん遠くに来たものです。
21世紀のスペシャルクーペには、高張力鋼板、アルミニウム、そしてCFRP(カーボンファイバー)など、複数の素材が用いられ、ボディ剛性のアップと軽量化が図られました。カタログ上の車重は1940〜2020kgと、絶対的には「軽い」とはいいかねる仕上がりですが、安全性を大幅に向上させ、この手のクルマにつきものの、各種豪華装備を搭載しての数字ですから、「この程度に留まった」と評するべきでしょう。
パワープラントは2種類。3.5リッターのV6(299馬力/36.3kg-m)とふたつのモーター(180馬力/30.6kg-m)を組み合わせたハイブリッド版と、5リッターV8(477馬力/55.1kg-m)に10速(!)ATを組み合わせた“ピュア”ガソリンエンジン車です。
先進のクーペモデルらしく、前者には“マルチステージハイブリッドシステム”と呼ばれる新機構が採用されました。
トヨタ「プリウス」などで使われているハイブリッドシステム(THS Ⅱ)は、エンジン、モーター、発電機を“動力分配装置”で有機的に結びつける方式です。そしてLCのマルチステージハイブリッドシステムでは、基本的な考え方はTHS Ⅱそのままに、構成要素を縦型に配置し直しました。
具体的には、エンジン→モーター(1)→モーター(2)→4速ギヤボックスの順に並びます。モーター(1)は、発電機やスターターとしても使われ、モーター(2)は主にトラクションを担当します。マルチステージハイブリッドシステムのキモは、エンジン+モーター×2の出力軸に4速のギヤボックスを追加したこと。これまで以上にエンジンを有効活用して「よりスポーティで」「燃費のいい」システムにすることができたのです。
ご存知の方も多いと思いますが、電気モーターには回り始めから最大トルクを発生できるという強みがある一方、回してもあまり意味がないこともあって、高回転がさほど得意ではありません。そのため、従来のハイブリッドシステムは、モーターの回転数の上限に配慮し、エンジンの回転数を抑える場面が生じました。しかし、マルチステージハイブリッドシステムでは、4枚のギヤを上手に活用し、この制限を回避しています。
ちなみに、LCハイブリッド版のトランスミッションは、これまでのハイブリッドモデル同様“電気式無段変速機”ということになりますが、擬似的に10速のギヤを切ることで、自然で、かつスポーティなフィーリングを実現しています。