最初に試乗したのは「LC500h Lパッケージ」(1350万円)。ハイブリッドモデルの豪華内装バージョンです。“ガラスパノラマルーフ”が与えられ、贅沢なセミアニリン本革シート(ベンチレーション&ヒーター付き)がおごられます。足もとは、オプションの21インチ!…というか、標準でも20インチのタイヤ&ホイールが与えられることに、ちょっと驚きます。
やんわりと適度に上体をホールドしてくれるレザーシートに座って走り始めると、なるほど、スムーズかつググッとスポーティです。まあ、1.8リッターエンジン(98馬力/14.5kg-m)とモーター(72+7.2馬力/16.6+5.6kg-m)を組み合わせたプリウスと、このLCハイブリッドとを比較するのもバカらしいことですが、“アクセルワーク”と“実際の走り”との結びつきが、マルチステージハイブリッドシステムはグッと強まりました。
また印象的だったのは、ボディの剛性感の高さ。十分なパワーアウトプットの恩恵で、薄く硬い外殻を持ったクルマが滑らかに走ってゆく感じ。「何かに似ている…」と記憶の底をかき回してみたら、12気筒エンジンを搭載するフェラーリが引っかかってきました。うーん、贅沢!
ただこのLCハイブリッド、「ステアリングは軽め」「足は硬い」…と、個々の印象をメモすることはできるのですが、なんとなく、全体像がつかめない。新型車を解釈しきれない、といいましょうか。
そんな漠とした想いを抱いたまま、純ガソリン車たる「LC500 Sパッケージ」(1400万円)を試乗させていただいたら、これが実にイイ!
走り出しから大排気量エンジンならではの力強さがあり、その後のナチュラルな加速感が、ハンドルを握るドライバーをうれしがらせます。スロットルワークに反応するクルマの動きが俊敏かつ大胆で、なんというか、竹を割ったようなスポーツクーペ。古典的なドライビングプレジャーが濃厚に提供されます。
自然吸気エンジンの分かりやすさに加え、今回の試乗車=格納式のリアウイングを備えたSパッケージは、21インチを標準とした足まわりにトルセン式のLSDを装備したスポーツ指向のグレード、ということもあって、キャラクターに迷いがない。レクサスLCをして、スーパースポーツであるLFAの弟分ととらえるなら、オススメは5リッターV8モデルではないでしょうか。
では、21世紀のハイブリッドスポーツたるLC500hは、どんな人が乗るのでしょう? あれこれ考えていたら「裕福な女性たちですかね?」と、助手席から同乗者の声。レクサスLCをスタイリッシュなラグジュアリークーペととらえるならば「それもアリ」と賛成しながら、図らずも、胸の奥でとぐろを巻いていた疑問がハッキリ姿を現しました(←ちょっと大袈裟)。
ハイブリッド、V8モデルを問わず、レクサスLCを運転していると、開発者の執念やエンジニアの方々のご苦労、クオリティと性能の追求といった事柄が、ビンビン伝わってきて感心します。“ラグジュアリーなスポーツカーのあるライフスタイル”のパートナーとして、新しいレクサスはまさにピッタリでしょう。
でも、これは個人的な思い込みに過ぎないのかもしれませんが“クーペのある生活”というのは、もう少し広がりがあってもいいんじゃないでしょうか? 私がLCに対して感じたような「スポーツ一択!」ではなく。ステッチが美しい作り込まれた室内とか、魅惑のサラウンドサウンドシステム(13スピーカー)といったハードウェアを超えた何か…。LCをドライブしながら、なろうことなら「ハイブリッドLCでソアラの夢を見たい…」と感じている私がいました。
<SPECIFICATIONS>
☆500h Lパッケージ
ボディサイズ:L4770×W1920×H1345mm
駆動方式:FR
エンジン:3456cc V型6気筒 DOHC + モーター
エンジン最高出力:299馬力/6600回転
エンジン最大トルク:36.3kg-m/5100回転
モーター最高出力:180馬力
モーター最大トルク:30.6kg-m
価格:1350万円
<SPECIFICATIONS>
☆500 Sパッケージ
ボディサイズ:L4770×W1920×H1345mm
駆動方式:FR
エンジン:4968cc V型8気筒 DOHC
エンジン最高出力:477馬力/7100回転
エンジン最大トルク:55.1kg-m/4800回転
価格:1400万円
(文/ダン・アオキ 写真/ダン・アオキ、トヨタ自動車)
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