世界の空港案内[TRIP:05] バーゼル空港(スイス)

▲空港内にある地図を見ると3つの国の境目に近い位置に空港があることが分かる。空港はブルーのフランス領にあるがスイスから道路が伸びている

地図を見ると空港がある場所は確かに三カ国の国境にほど近い位置にあり、各国が空港を造るよりはひとつの空港を三カ国で使用した方が効率が良い。西ヨーロッパの多くの国は、今やシェンゲン協定加盟国(国境検査なしで国境を超えることができる協定)となっているため、フランスとドイツの往来は自由。しかし永世中立国スイスはEU非加盟、シェンゲン協定も非加盟のため国境が存在する。

ここでややこしいのが空港がある場所だ。敷地はフランス領内になるのだが、ターミナルビルは正面から見て右がフランス領、左はスイス領となっていて、スイスのバーゼル市内から伸びる道路がスイス側のターミナルへとつながっている。つまり車寄せもスイス側とフランス側があり、中央に国境フェンスがあるため車や人の往来は不可。ここだけ見ればふたつのターミナルをつなげたような形になっている。

▲車寄せはフランス領とスイス領きっちり分かれていて、人や車の通り抜けができないようになっている

しかしひとつの空港として使用されているため、出発ロビー内に一応国境の印はあるものの、空港に着いたら自分の搭乗する便がスイス側にチェックインカウンターがあるのかフランス側にあるのかを確認してから移動することになる。とはいえそこは同じ建物内。国境という気はあまりしない。

▲ターミナル出発階の案内表示。右の青はフランス領、左の赤はスイス領となっているが出発階のターミナル内に限り通り抜けは自由

ターミナル内で国の違いを感じるのは、スイス側でショッピングをする際の通貨はスイスフラン、公衆電話もスイスの電話会社、郵便ポストももちろんスイス国内仕様。一方フランス側の通貨はユーロ、電話会社や郵便ポストももちろんフランスのものだ。車寄せに停まる車両も、フランス側はEUナンバーでフランスのF記号をつけたもの、スイス側は白十字のスイスナンバーの車両が並んでいる

▲一見するとふつうの旅客ターミナルビルと変わらない。4階に展望デッキがあるのだが、フランス側とスイス側に分かれているため、移動の際は国境を超えることになる

出発便の旅客に関しては、これから出て行くのでそれほど気にしていないようだが、到着便の旅客は飛行機を降りて荷物を取った後にフランス(ドイツも含む)側に出るか、スイス側に出るかははっきりと決まっている。フランス側に出ればSNCFフランス国鉄の駅にアクセスするバスが停まっているが、スイス側はSBBスイス国鉄の駅行きのバスが停まっている。

▲フランス側の到着口を出るとフランスの鉄道駅行きのバスが待機していた。逆にスイス側はスイス・バーゼル駅行きのバスとなる

間違えた場合、フランス側は緩いようで、到着口のスイス側からフランス側へ抜けられる通路はあるのだが、逆にフランス側からスイスへ入る通路はない。まあスイス側の到着口から出発階に上がればフリーパスなのだが、一応到着フロアでは通り抜けできないようになっているのがおもしろい。

▲スイス側から見た出発階の案内。出発ホール1-2はフランス領、ここが国境になるのだが、知らなければ気が付かないほどだ

国境が意識的に使用されているのはターミナル内と車寄せだけ。さすがに駐機場は厳密に分けておらず、スイス国籍の飛行機がフランス側のターミナルに駐機してあることもある。

▲スイス側のカフェはCHFスイスフランで表記されるが、フランス側はユーロである。

言語についても、スイスのバーゼルはドイツ語圏だがフランス語を話す人も多く、この付近の人は2-3か国語を話せるのが普通。空港の案内表記も英語、フランス語、ドイツ語の3つの表記があるため、言語の問題はそれほどないのかもしれない。

もしスイスのバーゼルやフランス東部を旅することがあれば、こんな一風変わった空港に立ち寄ってみると日本人が考えている国境の感覚が変わるかもしれない。

 


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(文・写真/チャーリィ古庄)

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チャーリィふるしょう/写真家・冒険写真家・フォトジャーナリスト

1972年東京生まれ、旅客機専門の航空写真家。国内外の航空会社、空港などの広報宣伝写真撮影を行ない旅客機が撮れるところなら世界中どこでも撮影に出向き、これまで100を超える国や地域に訪れ、世界で最も多くの航空会社に搭乗した「ギネス世界記録」を持つほか旅客機関連の著書、写真集は20冊を超える。キヤノンEOS学園講師。成田空港さくらの山に自身がプロデュースしたフライトショップ・チャーリイズをオープン(www.charlies.co.jp

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